研究課題
本年度の研究ではまず、受精1.5時間後~5日後のゼブラフィッシュ胚において、グリコーゲン含量の変化を調べた。その結果、受精後から孵化前後(~受精2日後)にかけて、グリコーゲンの減少が起こっていることが明らかとなった。次に、メス卵巣内の卵母細胞におけるグリコーゲンの蓄積過程を検討した。まず、成熟とともにグリコーゲンが蓄積されていることが明らかとなった。抗グリコーゲン抗体による免疫組織化学に供した結果、成熟とともにグリコーゲンが蓄積し、卵母細胞の表層に移行していく過程が明らかとなった。また、グリコーゲンの蓄積に関与する遺伝子(gys1、gys2)の発現は成熟ステージの早い時期の卵母細胞で見られた。宮崎県で養殖されているヤマメ及びその海上飼育型であるサクラマスから生まれた卵を用い、発生過程において、卵黄内のアミノ酸、グルコース、グリコーゲンの利用について検討を行った。孵化率ではヤマメの91% (213/234)に対して、サクラマスでは96.6% (226/234)と高い値を示した。受精120日後、卵黄嚢が縮小し、卵黄内のほとんどのアミノ酸が枯渇していたヤマメに比較し、サクラマスの卵黄では多くのアミノ酸が残存していた。卵黄内では発生と共にグルコースが増加し、受精後40日をピークに減少していった。遺伝子発現解析の結果から、ゼブラフィッシュと同様にyolk syncytial layerで糖新生が起こっている可能性が考えられる。グリコーゲン測定の結果、受精後40日に胚体でグリコーゲンが急激に蓄積され、ヤマメでは孵化後に元のレベルに戻ることが観察された。一方、サクラマスでは受精後100日目までは高いレベルに維持されていた。アミノ酸やグリコーゲンの残存量、および孵化率の高さから、発生初期においてはサクラマスより生まれた仔稚魚の方がヤマメのそれよりも優れた生命力を有することが示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Comparative Biochemistry and Physiology, Part A
巻: 187 ページ: 111-118
doi.org/10.1016/j.cbpa.2015.05.017
International Journal of Biological Sciences
巻: 11 ページ: 712-725
doi: 10.7150/ijbs.11827