研究課題/領域番号 |
13J05624
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
荒砂 茜 金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 含水非晶質シリカ / シリカゲル / 衝撃圧縮 / 静水圧 / 珪藻 / 彗星 / ナノ構造 / シラノール |
研究概要 |
本研究は、含水非晶質シリカの高圧・高温下での構造変化と水の挙動を明らかにし、沈み込み帯に持ち込まれる珪藻や放散虫の殻などの生物起源の含水非晶質シリカの高圧挙動、および彗星核等の地表への衝突時の構造変化についての情報を得る事を目的としている。先行研究から、珪藻や放散虫の殻、彗星核のモデル物質の一つとして、含水非晶質シリカ物質のシリカゲルが望ましいと考えた。平成25年度は、自身で合成したシリカゲルについて高圧・高温実験を中心に行い、実験後の回収試料について粉末X線やラマン分光法等を用いて詳細に解析し、以下の成果を得た。 1. シリカゲルについて、31GPaまでの衝撃圧縮実験を行った。21GPa以上の圧縮で、ゲルのネットワーク構造のシリカガラス化を確認した。これは、衝撃圧縮に伴って発生した熱によりシラノールの脱水重合が起こり、新しいネットワーク構造が形成されたこと、また、熱によって既存のネットワーク構造の再構築が起きたことによると考えられる。なお、シリカゲル中に含まれる特定の結合状態を持つシラノール(Si-OH)が、31GPaの圧縮後も安定的に残存することも明らかにし、水の宇宙起源を裏付ける成果を得たと考えられる。これらの成果については、投稿論文として準備中である。 2. シリカゲルについて、地殻−上部マントルの圧力に相当する10GPaまでの静水圧縮実験を行った。動的な圧縮と同様に、ゲル中の水分子、そして特にシラノールの脱水には圧力ではなく熱が大きく影響することが明らかとなり、含水非晶質シリカの沈み込み帯での水の保持能力について解明できた。この成果は、沈み込み帯でのマグマ形成や、地球浅部での地震発生のメカニズムについても重要な情報を与える。これらの成果の一部については、国際学術論文、国内学会にて発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度の目的であった、衝撃圧縮および静水圧縮下でのシリカゲルのナノレベルでの構造変化および水の挙動を明らかにすることに成功した。これらの成果は、学会・国際学術論文として既に公表されており、成果の重要性が認められたと考えられる。平成25年度の研究成果は十分であり、計画以上に進展しているといえるであろう。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、本年度に得られたシリカゲルの衝撃圧縮実験の成果をふまえ、Mg等を含むゲルについて衝撃圧縮実験などの高圧実験を行い、圧縮試料の構造変化や水の挙動について解明を行う。これにより、さらに実際の隕石や彗星の組成に近い物質の高圧挙動が明らかになる。Mgを含むシリカゲルについては、平成25年度に既にゾル−ゲル法による合成に成功しており、現在、ラマン分光法や、X線回折を用いて合成したゲルの詳細な解析を行っている。また、Mg等を含むゲルを加熱して得た無水のMgSiO_3結晶の合成も行い、高圧・高温実験を実施することで、Mg等を含むゲルの高圧下でのより詳細な構造変化と水の挙動を解明することができると期待される。
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