本研究は、彗星が地球表面へ衝突する際の、彗星核中のシリケイトおよび水(氷)の挙動を明らかにすることを目的としている。実際に得ることの難しい彗星核のモデル物質として含水非晶質シリケイトを合成し、地表衝突のアナログ実験として衝撃圧縮実験を行うことで、実験的に彗星核の衝突挙動を明らかにした。 1.衝撃圧縮実験後のシリカゲルのNMR測定データの解析 前年度までに彗星核のモデル物質として、まず含水非晶質シリカ(SiO2)物質であるシリカゲルの衝撃圧縮を行った。実験後の回収試料について多種の解析を行い、30GPaの圧縮後も水が残ることを明らかにした。この成果は平成28年に論文として発表した。また、より詳細な水の情報を得るため、圧縮試料のNMR測定を実施し、圧縮後に残存する水の定量化や水酸基の形態(Qn)について詳細に解析することを試みた。残念ながら不純物の影響で正確な含水量の決定には至らなかったが、30GPaでの水の残存と、さらにこれまで不明瞭であった圧縮後の水酸基の状態について明確になった。この成果は平成28年7月に関連する国際学会で発表し、高い評価を得た。 2. Mgを添加したシリカゲルの合成と衝撃圧縮実験後の試料の解析 本研究では1で得られた知識や技術をもとに、より実際の彗星核の組成に近いMgを添加したシリカゲルを合成し、衝撃圧縮実験を行うことで、彗星核の衝突挙動をより鮮明に解明することが最終目的である。Mg添加のシリカゲルの合成は非常に高度な技術を要したが、合成に成功し、衝撃圧縮実験も実施できた。合成できた試料の量が少なかったため予定より少ない圧力水準で実施することとなった。しかし、比較的低圧での圧縮後に1では見られなかった結晶化が確認されるなど、非常に興味深い成果が得られた。現在も詳細な構造変化の解明に取り組んでおり、この成果をもとにさらに研究を発展させている。
|