研究課題/領域番号 |
13J05637
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
櫻井 雄基 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員DC2
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キーワード | ヒッグス粒子 / アトラス実験 / 素粒子実験 / タウ粒子 |
研究概要 |
研究の目的であるタウ粒子対に崩壊するヒッグス粒子の探索を、2012年にLHC-ATLAS実験で取得されたデータを使用し行った。特に自身の研究課題としては、生成過程に特化した事象選択の確立、実データを用いたジェットがタウ粒子にフェイクする事象の精密な見積もり、多変量解析を使用した分離能力の向上等により、探索感度の改善を行った。 結果として、信号事象の顕著な超過を多変量解析の出力分布から観測した。その超過を精密に検証することで、タウ粒子対に崩壊するヒッグス粒子の"証拠"(信号優位度4.1σ)を得ることができた。また、信号強度μ(断面積の予言値と観測値の比)を算出すると、μ=1.4+0.5-0.4となり、標準理論から予言されるヒッグス粒子に矛盾しない結果を得た。さらに、再構成質量のピーク値は約125GeVとなり、現在ホソン対過程で発見されているヒッグス粒子と同等である。以上の結果から、研究目的である単独発見に大きく前進したと言える。現在は更なる改善を加え、学術論文出版に向けて解析を進行中である。また、2015年から再稼働するLHC Run2実験に向け、タウ粒子トリガーの改善を行った。具体的項目としてまず、雑音となるpile-up事象の効率的除去法、トリガー変数の最適化に焦点を当て研究を行い、トリガー自体の改良を図った。また、ヒッグス粒子探索に特化したトリガーのレートの見積もりに関しても研究を行った。今後は、実際にデータ取得を行うトリガーメニューの構築、最適化を遂行していく
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に従い、2012年にATLAS実験で取得されたデータを使用し、タウ粒子に崩壊するヒッグス粒子の探索を行った。その物理結果として、タウ粒子に崩壊するヒッグス粒子の証拠(信号優位度4.1σ)を得ることができ、更なる改善を進行中であるため、研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は研究目的であるタウ粒子に崩壊するヒッグス粒子の探索を、2011年に取得されたデータ、及び更なる解析の改良を加えて行う。その解析結果を学術論文として出版し、国際学会等で発表していく予定である。 また、当初の計画通り並行して、2015年に再稼働するLHC-ATLAS実験に備え、タウ粒子トリガーの構築、改善を行っていく。それによって、研究目的である単独発見、湯川結合定数の精密測定の早期実現に貢献する。
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