研究概要 |
近年, 我が国において心血管系疾患や脳血管障害等の循環器に関する疾患による死亡者は全死亡者数の約30%に及んでおり, これらの主原因は動脈硬化であることが広く知られている. 動脈硬化は動脈が肥厚し硬化する進行性の症状であり早期発見が困難であるという特徴を有しているため, 有効な予防策および治療対策の確立は急務の課題であるが, 現在までに動脈硬化発生の詳細なメカニズムは解明されていないが, 血管内皮機能の衰えが動脈硬化進行の一因になることがこれまでに明らかになっている. 本研究では, 動脈硬化症の診断・治療・治療に対する評価を非侵襲で一貫して行えるシステムの実用化のための基礎検討を行う. 本年度は血管内皮機能検査法の一種である血流依存性血管拡張反応(Flow-Mediated Dilation : FMD)検査中における血管粘弾性特性の変化について計測を試みた. 具体的にはFMD検査中の血管径と動脈血圧を同時計測し, 一拍ごとに血管粘弾性特性を推定するという新たな評価法を開発し, FMD検査中の血管粘弾性特性の変化を明らかにした. 実験では, 健常者6名に対してFMD計測を行い, 超音波装置と連続血圧計を用いて, 血管径と動脈血圧の計測を行った. 計測データから血管粘弾性特性を推定した結果, 駆血前と比較して駆血後, 一時的に剛性値は減少し, 粘性値は増加傾向を示した. さらに, 駆血前後の各粘弾性指標の変化率と%FMDとの間に中程度の相関が得られたことから, 本指標を用いて%FMDに近い血管内皮機能評価ができる可能性が示された.
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今後の研究の推進方策 |
超音波が血管に曝露された際における血管組織内の血管新生関連因子増加と曝露超音波の物理量との関連性について予測する方法を提案する. 具体的には, まず血管組織のみに対応するモデルを作成し, 放射超音波が血管に曝露された際に得られる圧力変化, 生体組織吸収エネルギー量, 温度変化等の様々な物理量を解析する. 次に実測で確認された血管新生関連因子増加量等のデータを比較し, 両者の因果関係を考察および両者を換算可能とするためのモデル式の開発を行い, 超音波の物理量が血管新生関連因子増加に寄与する機序を明らかにする.
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