研究概要 |
本研究では、著者のMetal-Organic Frameworks (MOFs)触媒の研究成果を基に立案した「水の光分解を行う金属錯体の分子設計案」を土台にして、高効率に水の光分解を行う金属錯体触媒の創成を目指す。触媒には、有機配位子部位の構造に伴い金属周囲の配位構造の剛直性が変化すると考えられる球状超分子金属錯体Metal-Organic Polyhedra (MOP)を利用する。本年度は、Paddlewheel型ロジウム二核クラスターを骨格に持つ球状超分子錯体の合成手法を確立し、更に、光触媒反応における最適な反応条件を調査する事を目的とした。球状超分子錯体に関しては、まず初めに[Rh_<24>(m-BDC)_<24>](m-BDC=1,3-benzendicarboxylate)の合成を行った。しかしながら、本錯体は、一般的な有機溶媒および水に不溶性であり、目的の触媒として使用する事は困難であると考えた。そこで、著者は、有機配位子部位に直鎖のアルキル基を導入した溶解性のMOPの合成を目指した。数種の有機配位子及びそれらをリンカーとしたMOPの合成を試みた所、5-hexanoylamido-1,3-benzendicarboxylate (haBDC)がPaddlewheel型ロジウムニ核クラスターに配位した[Rh_24(haBDC)_124]が有機溶媒に対して溶解性を有する事を明らかにした。更には、1,3-5-benzen dicaroboxyllic acid (H_3BTC)がHalf-paddlewheel型ロジウム二核錯体である[Rh_2Cl_2(O_2CCH_3)_2(bpy)_2](bpy=2,2'-bipyridine)と反応すると、球状錯体である{[Rh_2Cl_2(bpy)_2]_6[BTC]_4}が選択的に得られる事を発見した。本錯体に関しては、単結晶X線構造解析によって、その骨格構造を決定する事に成功している。光触媒反応に関しては、Paddlewheel型ロジウム二核錯体の代表例である酢酸ロジウム二核錯体[Rh_2(μ-O_2CCH_3)_4]を水素発生触媒として使用し、光増感剤として[Ir(ppy)_2(bpy)]PF_6、犠牲剤としてTriethylamine (TEA)を使用する事で還元的消光過程の均一系システムを構築した。最適条件下において可視光照射を行った所、7700 TON (per Rh_2 complex)の触媒サイクルで反応が進行する事が確認できた。この触媒効率は、既報のどの水素発生錯体触媒の効率よりも高い値である。また、Dispersion補正を行ったDFT計算(DFT-D)により、反応中間体であるのヒドリド錯体[H-Rh_2(O_2CCH_3)_4]^<0/-1>の構造を断定する事がでた。
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