研究課題/領域番号 |
13J05670
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石津 裕之 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 北野社 / 伝奏 / 曼殊院 / 官位 / 執奏 / 菅原氏 |
研究概要 |
本年度は、中近世移行期における大神社の実態解明を目指し、分析を進めた。具体的には、近世の大神社が持つ特質の一つである中世以来の朝廷との密接な関係について、北野社の内部組織構成員が叙任されていた官位に注目し、その官位を朝廷に執奏(=取次)していた公家=伝奏と神社の関係性を分析した。とりわけ、従来の先行研究において北野社の伝奏とされていた曼殊院門跡に焦点を当て、これと北野社との関係を考察することで上記の課題に迫った。 まず、社家松梅院の院主が残した日記を用いて、松梅院と曼殊院門跡の関係性について検討した。その結果、当該時期に松梅院と曼殊院が、豊臣・徳川両政権の権威を纏いつつ、激しく対立を繰り返し、最終的に近世北野社の内部組織の秩序は、曼殊院門跡を頂点とするものとして安定したことが判明した。すなわち、中近世移行期の政治権力による規定性を組み込んだ近世北野社の成立を解明することができた。さらに、史料調査を進めていく中で、近世中期の実態解明をも行いえた。具体的には、伝奏を菅原氏の公家が務め、かつ菅原氏と曼殊院門跡が執奏権をめぐって対立していたことが分かった。 総じて、本年度の検討作業の結果、北野社を素材として、近世大神社と朝廷の関係と、それに対応する内部組織の実態を解明することができた。そして、同内容について、展望を交えた形で論文化を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
分析の前提となる原本史料の調査を着実に行い得たことや、近世大神社を考える上で大前提となる朝廷との関係について、曼殊院門跡以外の伝奏の存在を史料から新たに発見したこと、さらに当初計画していた中近世移行期に留まらず、近世中期までをも含み込んで伝奏の展開を明らかにしたことに拠る。
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今後の研究の推進方策 |
次年度には、近世大神社が帯びた性格の一つである国家祭祀について、内部組織の実態に基づきつつ、検討を行う予定である。本年度に明らかにした伝奏と北野社の関係、及びそれに対応する内部組織の展開は、かかる課題に取り組む上で重要な前提といえ、積極的に本年度の成果と関連させつつ検討を行っていくことする。また、引き続いて北野社所蔵の史料や東京大学史料編纂所・宮内庁書陵部などが所蔵する史料の原本調査を行い、基本的な事実確定を並行しつつ検討を進めることとする。
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