研究実績の概要 |
シロイヌナズナには5つのポリアミン酸化酵素遺伝子(Polyamine oxidase, PAO)の存在が知られ、AtPA01~AtPA05と呼称されている。これまでの研究により、AtPA01~AtPA04までの特徴づけがなされていた。本研究では、AtPA05の特徴づけと植物における生理的役割を明らかにすることを目的とした。組換えAtPA05酵素は酸性側(pH 6.5)ではサーモスペルミンを、よりアルカリ性側(pH 7.5)ではスペルミンを共にスペルミジンに変換する逆変換型の活性であること、従って、シロイヌナズナの5種のPAO酵素は全て逆変換型であること、を明らかにした。今年度、T-DNAの挿入によりAtPA05の機能を欠失した2つのシロイヌナズナ系統(Atpao5-1、Atpao5-2)を用いて、AtPAO5の機能に迫ることを試みた。野生株と比べ、Atpao5-1、Atpao5-2ではプトレシン、スペルミジンそしてスペルミン含量はほぼ同程度であったが、サーモスペルミン含量が約2倍となっていた。さらに、低濃度のサーモスペルミン含有培地に播種するとAtpao5-1、Atpao5-2の地上部の生育が阻害されることを見出した。根部の伸長には野生型との間に差異が見られなかった。この現象は、サーモスペルミン特異的であり、20倍量のスペルミン、200倍量のスペルミジンやプトレシン含有培地でも野生型との生育の差異は見られなかった。Atpao5-2に野生型由来のAtPA05遺伝子を導入した形質転換植物では、上記のサーモスペルミンによる生育阻害が回復することも確認した。Atpao5-1とAtpao5-2は、野生型に比べ栄養成長期から生殖成長期への移行が著しく遅れることも明らかにした。これらの知見は、サーモスペルミン代謝の重要性を強く支持する結果と言える。
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