研究課題
ビスフェノールA(BPA)はポリカーボネートプラスチックなどの原料化合物であるが、こうした製品から漏出したBPAが乳幼児の脳神経系や生殖腺系へ及ぶ悪影響が懸念されており、一刻も早くBPAの悪影響を分子レベルで解明することが期待されている。我々は、ショウジョウバエにBPAを食餌させて歩行活動リズムを解析し、BPA食餌ハエでは野生型と比較して活動量が大幅に増加した多動性症状が現れることを見出した。また、「period mRNAのThr-Gly(TG)リピートをコードする領域で分子淘汰が起こる」ことなども発見している。本研究最大の目的は、これらの発見を基点として、BPAによる歩行活動リズムの形成に関わる遺伝子への影響を解析することでBPAの悪影響を分子レベルで解明することである。本年度は、まずハエの活動に大きく関与する神経ペプチドPDFに着目し、ハエ脳を用いた免疫染色を行った。野生型ハエでは活動リズムを発振する神経細胞(時計細胞)でPDFが分泌され、軸索へ運搬される様子が観察されたが、BPA食餌多動性症状ハエでは軸索におけるPDFの染色が薄くなっていた。これにより活動リズムが撹乱されたと考えられる。また、BPA食餌"低活動性症状"ハエも少数存在したため、これを集めて遺伝子解析を実施した。period mRNAのTGリピートをコードする領域について解析したところ、野生型ではTG20回と23回の両方が検出され、BPA食餌多動性症状ではTG23回のみが検出されることが分かっていたが、新しくBPA食餌低活動性症状ではTG20回のみが検出されることが分かった。このことは、periodのTGリピート回数と活動リズムとの間に深い関係があることが示唆される。その他RNAシークエンスなど実施し、BPAが時計遺伝子や転写因子など多くの遺伝子の発現がDNAメチル化を介して変化していることが分かった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Peptide Science 015
巻: 1 ページ: 317-318