研究概要 |
高い熱電性能を示すマンガンシリサイド系熱電材料の開発をめざし, 本年度は元素置換, 室温以上における結晶構造の評価, およびCrGeγの合成を行った. まず, 新たにMnサイトを置換する元素としてMoとVを選択した. 両元素はCrと同様にMnSiγのホール濃度を増加させる働きがあり, 出力因子PFを向上させる可能性がある. 初めにMoはMnに比べ原子半径が比較的大きいことから, 約3%しか固溶しなかった. 続いてVは約6%固溶し, そのPFの最大値は1.7×10^<-3>W・m^<-1>・K^<-2>(at850K)とCrを置換した場合と同程度の値を示すことが分かった. 次に, MnSiγの室温以上における結晶構造の評価を行った, 熱電素子としてMnSiγの実用化を考えた場合, 特に無次元性能指数ZTが高い800K付近まで結晶構造や組織が不変であるかどうかが素子の安定動作に直結するため, 重要な研究項目である. 粉末X線回折測定を行った結果, MnSiγは1093K以上ではMnSiγとMnSiに分解してしまうことが分かった. しかし, MnSiγのZTは800Kで最大値を示すため, 実用上の観点からは問題ないと考えられる. (3+1)次元結晶構造解析を用いてγの温度変化を解析した結果, γは室温から773Kまで一定であったが, 773K以上では連続的に減少することが分かった. これまでに, MnSiγにおいてγの連続的な変化の報告はなく, 本研究で明らかになった. 最後に, MnSiγ-CrGeγ4元系Chimney-Ladder型熱電材料の合成のために, CrGeγの合成を行った. Crは真空溶解中では蒸発しやすいことから, アーク電流を弱めにすることで, 組成ずれの少ない試料が得られることが分かった.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は計画通りMnSiγ-CrGeγ4元系試料の合成と熱電特性・試料内部組織の評価を行っていく. 具体的には, 評価方法として電子顕微鏡を用い, 元素の分布や粒径, 粒界面の評価を行う. それらの結果と熱電特性(特にフォノンと関係性が深い熱伝導率κ)の測定結果と照らし合わせて評価を行う. また本年度明らかになった, 高温におけるγの温度変化については, バルク試料を用いて評価を行っていく. バルク状態でγの変化が試料内部組織に与える影響を, 電子顕微鏡を用いた組織観察やX線回折法から評価し, その熱電特性に対する影響を調査する.
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