研究課題/領域番号 |
13J05742
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
片山 哲也 東京理科大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 中性子星の状態方程式 / (非)対称核物質 |
研究概要 |
本研究の第一目的は、短距離相関を含んだ現実的な核力から出発した相対論的ブルックナー・ハートリー・フォック近似を用いて、中性子星の状態方程式に非常に大きな影響を及ぼすハイペロンをより厳密に扱い、ハドロンレベルでの中性子星の状態方程式を決定することである。そこで、今年度は研究実施計画どおり、先行研究で行われた相対論的ブルックナー・ハートリー・フォック近似による対称核物質、非対称核物質の計算を再現し、その特徴を議論することで、高密度核物質系である中性子星計算に応用するのに最も良い手法を考察し、その成果を論文および学会で発表した。 本研究で採用する相対論的ブルックナー・ハートリー・フォック近似では、核子などのバリオンは核物質中における2体の散乱方程式によって記述されるが、相対論的ブルックナー・ハートリー・フォック近似と一口に言っても、その散乱方程式を2粒子の静止系、重心系のどの系で求めるのか、また、重心系で散乱方程式を求めたとして、どのようにして重心系で得られた物理量を静止系にローレンツ変換するのか等といったことについて、いくつか異なった計算手法が存在する。したがって、それらの差異、特徴を考慮し、最も適切な手法を吟味して核物質の性質の計算を行った。また、この相対論的ブルックナー・ハートリー・フォック計算は、一般に中性子星計算に用いられている相対論的ハートリー近似に比べて膨大な計算時間を必要とする。そのため、核子に加えsクォークを含んだハイペロンまでを考慮に入れた、より現実的な中性子星計算を行うのは難しい。そこで、この相対論的ブルックナー・ハートリー・フォック近似の特性は損なわずに、より計算コストを減らす方法を自己エネルギー、エネルギー密度の双方について議論し、高密度核物質系に相対論的ブルックナー・ハートリー・フォック近似を応用するのに最も良い方法を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書に記載したように、今年度は先行研究で行われた相対論的ブルックナー・ハートリー・フォック近似による対称核物質、非対称核物質の計算を再現し、特徴について議論することで、高密度核物質系である中性子星計算に応用するのに最も良い手法を考察することであり、予定どおり進行している。
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今後の研究の推進方策 |
先行研究で行われた相対論的ブルックナー・ハートリー・フォック近似では、計算の過程で2粒子の質量に平均化の近似をしている。そのため、この方法を中性子星の中心部で中性子と陽子の存在比が大きく非対称となる場合や、核子-ハイペロン間の相互作用のような、大きく粒子の質量等が異なる異種粒子間の相互作用にまで適用する事を正当化するのは難しい。そこで、現在、異種粒子間の相互作用にも相対論的ブルックナー・ハートリー・フォック近似を適用可能なものとするために改良を行っている。これがうまくいけば、核子-ハイペロン間の異種粒子の相互作用における相対論的ブルックナー・ハートリー・フォック計算が可能となり、さらには、今年度論文としてまとめた自己エネルギーとエネルギー密度における近似法と合わせて、ハイペロンの自由度を考慮に入れた現実的な中性子星の状態方程式の計算が可能となることが期待できる。そのため、今後は、相対論的ブルックナー・ハートリー・フォック近似の改良を行い次第、順次ハイペロンの自由度を考慮に入れた現実的な中性子星の状態方程式の計算を行う予定である。
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