研究課題/領域番号 |
13J05742
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
片山 哲也 東京理科大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 中性子星の状態方程式 / (非)対称核物質 / ハイペロン |
研究実績の概要 |
今年度は、相対論的ブルックナー・ハートリー・フォック近似を用いて、核子だけではなくハイペロンまでの自由度を考慮に入れた超高密度核物質である中性子星物質の計算を行い、その成果を論文および学会で発表した。 先行研究で行われてきた相対論的ブルックナー・ハートリー・フォック近似を用いた核物質計算は、主に陽子と中性子の割合が等しい対称核物質における核子飽和密度付近の領域に限定されて行われてきた。そのため、単純に先行研究で行われた手法を、そのままハイペロンの自由度までを含めた中性子星物質に適用するには問題が生じる。それは、先行研究では、バリオンの自己エネルギーの空間成分を小さいと仮定して無視していること。核物質中におけるバリオンの散乱行列を求めるにあたって、バリオンの負のエネルギー状態を無視することに起因する、求められたバリオンの散乱行列からバリオンの自己エネルギーへの変換が一意的に決まらないこと。この2つに問題がある。そこで、従来の手法に加えて、バリオンの自己エネルギーの空間成分を小さいと仮定することなく適切に考慮に入れ、また、バリオンの散乱行列からバリオンの自己エネルギーへの変換が一意的に決定されるようなバリオンの負のエネルギー状態も考慮することで、中性子星物質へ相対論的ブルックナー・ハートリー・フォック近似を適用できるように改良を行った。そして、この手法で得られた核物質の性質について議論した。これより得られた中性子星物質の結果は、近年問題となっている太陽質量の約2倍の中性子星を説明できるものであり、ハドロンレベルにおける最も信頼できる中性子星物質の計算のひとつとなるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、先行研究で核子に対して適用されてきた相対論的ブルックナー・ハートリー・フォック近似の手法を、そのままハイペロンに対しても適用し、中性子星の状態方程式を求めることであった。しかし、研究実績の概要でも記載したように問題が生じたため、改良を行うのに大半の時間を使ってしまった。しかし、研究計画調書に記載したように、今年度の目的は、まだ行われてはいないハイペロンの自由度までを考慮に入れた中性子星の状態方程式を計算することであり、予定どおり進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今回行った相対論的ブルックナー・ハートリー・フォック近似による中性子星の状態方程式の計算は、ハドロンレベルにおける最も信頼できる中性子星物質の計算のひとつである。しかし、より現実的な中性子星の計算を行うためには、今回のハドロン物質の計算に加えて、中性子星の中心部において存在が期待されているクォーク相までを考慮に入れる必要がある。そこで、現在は中性子星におけるハドロン相からクォーク相への相転移を考慮に入れた最終的な中性子星物質の研究を行っている。また、今回行った相対論的ブルックナー・ハートリー・フォック近似計算の結果をより簡単なモデルで表現するためのパラメテリゼーションについても行う予定である。これらの結果は、まとまり次第論文及び学会で発表予定である。
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