今年度は、相対論的ブルックナー・ハートリー・フォック近似による核子だけでなくハイペロンまでの自由度を考慮に入れた中性子星内ハドロン相の計算をより簡単なモデルでパラメテリゼーションを試みた。また、中性子星の中心部で存在が期待されているクォーク相をNambu-Jona-Lasinioモデル、ハドロン相を相対論的ブルックナー・ハートリー・フォック近似により中性子星内における相転移を議論した。 本研究で採用する相対論的ブルックナー・ハートリー・フォック近似では、核子などのバリオン間の相互作用が、核物質中における2体の散乱方程式によって記述される。用いられるバリオン間の相互作用の強さは、核子を例にとると何千もの散乱データから得られた信頼できる値を修正することなくそのまま用いて、核物質の特性を満たすことが可能である。ゆえに中性子星のような超高密度核物質系を解析するのに最も適した手法である。これより得られた中性子星物質の結果は、近年問題となっている太陽質量の約2倍の中性子星を説明できるものであり、ハドロンレベルにおける最も信頼できる中性子星物質の計算のひとつとなるものである。 上述のように相対論的ブルックナー・ハートリー・フォック近似はハドロンレベルで中性子星を記述するのに最も適したモデルではあるが、そのモデルの複雑さから中性子星を含め一般的には核物質の計算にほとんど使われていない。そこで、核物質の計算に非常に良く用いられている相対論的平均場近似を用いて、バリオン-中間子間結合定数のパラメテリゼーションから相対論的ブルックナー・ハートリー・フォック近似の結果の再現を試みた。 また、中性子星の中心部で存在が期待されているクォーク相をNambu-Jona-Lasinioモデル、ハドロン相を相対論的ブルックナー・ハートリー・フォック近似により中性子星内における相転移を議論した。
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