海洋大循環モデルを用いた混合層水温収支解析から、ニンガルー・ニーニョ発生時における沿岸域の正の海面水温偏差形成は、ルーイン海流の強化に伴う正の南北移流偏差と、混合層が経年的に薄い為に効率的に短波放射により暖められることに起因する事が分かった。一方で、その減衰にはより大きな顕熱損失が重要な役割を果たす事が分かった。成長期における南北流速の強化が南北水温勾配を和らげるため、南北移流偏差は最終的には符号を変え、減衰へと寄与する。 沖合の成長(減衰)過程での正(負)の混合層水温傾向偏差は、正(負)の混合層厚偏差に起因する短波放射の加熱効果の強化(抑制)により作られる。 ニンガルー・ニーニャの形成、減衰機構はニンガルー・ニーニョのミラーイメージに近かった。特に、沿岸域ではルーイン海流の弱化による負の南北移流偏差が、沖合では気候値の短波放射による加熱効果の抑制が重要であることが分かった。 これまでの研究はオーストラリア西岸域に特有の正の大気海洋不安定相互作用を支持するものであったが、その存在を保証するものではない。特に、エルニーニョ/南方振動の影響は線形ではないため、遅延型効果を含め、その影響を観測データから除去する事はできない。そこで、ニンガルー・ニーニョ(ニーニャ)がエルニーニョ/南方振動とは独立に発生する事ができるのか調べるために、熱帯太平洋の海面水温を日平均気候値へと強く緩和しエルニーニョ/南方振動の発生を抑制した大気海洋結合モデル実験を行った。ニンガルー・ニーニョ(ニーニャ)は、エルニーニョ/南方振動が存在せずともオーストラリア西岸域に内在する大気海洋相互作用を通じ現実と同程度の振幅をもって成長することが分かった。
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