研究概要 |
脳計測データ解析を通して, 実環境におけるヒトの自己位置推定アルゴリズムを解明することを研究目的とする. 本研究ではそれを実現するために, ヒトが自己位置推定タスクを行っている時の脳の活動をEEG(脳波)とNIRS(脳血流)により計測・解析することで, ヒトの計算神経科学モデルを構築する. 当該年度では, アーチファクトの多い混雑環境における脳の情報処理に関わる部位の高精度な推定を実現するため, 研究計画における第一段階「実環境下での動的機能解明に向けた脳計測データ解析法の研究」に従事した, 具体的に得られた成果は以下のとおりである. 1. ヒトNIRS・EEG同時計測における実験課題を提案. NIRS・EEG解析手法開発のためのデータセットとして, 新たに選択的空間注意課題を提案した. この課題は解析手法開発における精度向上評価のためのデータセットとして適したものである. 2. 実験参加者を集めての脳計測実験. 提案した実験課題におけるNIRS・EEGデータを取得するため, 8人の実験参加者を集い, 実験を行った. 実験参加者にはNIRS・EEGセンサを装着してもらい, 実験課題中の脳活動を計測した. 3. 実環境に適用可能なNiRS・EEG解析手法の開発, NIRS・EEGによる相補的な情報統合手法を提案し, 取得したデータにおける有効性を確認した. 提案手法は高い空間分解能を持つNIRSを事前情報として, 高い空間分解能を持つEEGから脳活動電流源推定を行うものである, 結果として, 実験参加者の注意方向が従来手法よりも高精度で予測できた. また, この手法はNIRS・EEG計測に基づくものであるため, 実環境データへの適用が可能である. これらの研究内容についてまとめた論文は国際学術専門誌に掲載された(Morioka et al., Neurolmage, 2014)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は研究計画書に則って「実環境下での動的機能解明に向けた脳計測データ解析法の研究開発」に関する研究が行われた. 以上の結果は当初の研究計画に沿ったものであり, それらをまとめたものは国際学術専門誌にも掲載された(Morioka et al., Neurolmage, 2014)ため, 当初の目的を期待通り達成していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度は研究計画書に則って「実環境下での動的機能解明に向けた脳計測データ解析法の研究開発」に関する研究が行われたが, 現在はさらに非定常性の大きな実環境下においてもロバストな解析手法を開発中であり、見込みのある解析結果が得られている. それが実現された後, ヒトが自己位置推定タスクを行っている時の脳の活動をEEG(脳波)とNIRS(脳血流)により計測・解析することで, ヒトの計算神経科学モデルを構築し, 実環境におけるヒトの自己位置推定アルゴリズムの解明を目指す。
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