研究課題
肝細胞移植の新しいソースとして成熟肝細胞と胆管上皮細胞への二方向性の分化能と高い増殖能をもった肝幹・前駆細胞が注目されている。そこで、肝発生過程における肝幹・前駆細胞の分化制御因子の探索を目的とし細胞周期関連遺伝子の働きに注目して研究を行った。前年度までの研究から肝発生過程において細胞周期関連遺伝子のうち、p57が胎仔肝幹・前駆細胞で特異的に高く発現し、成熟肝細胞では著しく発現が低下すること、胎仔肝臓ではp57は肝幹・前駆細胞と間葉系細胞で高く発現していること、p57欠損マウスでは胎生後期の肝臓における肝機能遺伝子の発現が低いことを明らかにした。また、p57欠損マウスは出生直後に死亡するが、p57欠損と野生型マウスのキメラ個体は成体まで生存し、p57欠損肝幹・前駆細胞はキメラ肝臓内では野生型肝細胞と同等の成熟肝細胞に分化することを明らかにした。肝・幹前細胞の増殖、分化は肝・幹前細胞自身の内的因子と、環境から受ける外的因子の両方によって制御されることが知られている。そこで、p57欠損マウスでみられた肝成熟不全は外的因子である間葉系細胞が原因であると仮説を立て、仮説の検証、間葉系細胞由来の外的因子の探索を行った。その結果、in vitro増殖系では、p57欠損肝幹・前駆細胞は野生型と同等の増殖能を示し、in vitro成熟誘導系では、p57欠損肝幹・前駆細胞は野生型と同等の肝機能遺伝子の発現が誘導された。さらに、網羅的遺伝子発現解析から、野生型間葉系細胞に比べp57欠損間葉系細胞で高く発現している遺伝子が特定され、肝幹・前駆細胞の分化を制御する間葉系細胞由来の外的因子の候補が明らかになった。本研究で得られた知見は肝成熟を制御する分子機構を解明するという肝発生の研究のみならず、ヒト幹細胞から誘導した肝細胞やin vitro培養により機能が低下した肝細胞の機能の亢進に役立つ。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Methods Mol Biol
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