研究課題/領域番号 |
13J05801
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
林 瑛理 京都大学, 大学院医学研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | 減数分裂 / 生殖細包 / クロマチン動態 / ゲノム維持修復 / 細胞内シグナル伝達 / 発生異常 / リン酸化プロテオミクス / 遺伝子改変動物 |
研究概要 |
本研究では哺乳類生殖細胞の減数分裂におけるクロマチン状態の時空間的制御を中心とした分子ネットワークの解明を目的とし、クロマチン制御に関連した細胞内シグナル伝達への寄与が期待されるタンパク質キナーゼ遺伝子E20(仮称)並びにクロマチンへの局在と作用が期待されるヘリカーゼ遺伝子Hfm1の、2っの機能未知遺伝子の機能解析を進めている。平成25年度は、前年度までに作出したE20、Hfm1各遺伝子のノックアウト(KO)マウス2系統について引き続き交配繁殖を行い、Hfm1-/-マウスでは雌雄共に生殖巣の顕著な萎縮と配偶子形成異常、不妊性を確認し、精母細胞核内における減数分裂関連タンパク質の発現異常等を観察した。一方E20KOマウス系統については、継続的なヘテロKO(+/-)マウス同士の交配1と胎仔の組織学的解析の結果、ホモKO(-/-)個体は発生中期までに(程度に個体差のある)発生遅延及び体の矮小化を呈し、胎性期から出生後24時間にかけて致死性を示すことを確認した。E20-/-マウスが胚性-周産期致死であったことから、減数分裂に加え初期発生過程における役割を視野に入れた研究計画に変更した。これまでの解析ではE20-/-胚に特定の臓器における有意な異常は見出されず、概ね正常な形態形成過程が、野生型胚の発生に比べて遅れて進行しているように見受けられた。このため細胞増殖、細胞周期、アポトーシス制御やゲノム損傷応答等の細胞機能について比較解析する目的でE20-/-マウス胚性幹(ES)細胞及びマウス胎仔繊維芽(MEF)細胞を作成した。同ES細胞は電気穿孔法によるloxP配列及び薬剤耐性遺伝子を含むDNA断片の導入、高濃度G418選択によるE20fZ/flES細胞の単離、Creリコンビナーゼの一過性強制発現によるflox領域欠失を経て樹立、同MEFはE20+/-マウス同士の交配で得た胎齢10.5日胚から機械的解離により作成した。本年度は同ES細胞について通常条件及び各種遺伝毒性ストレス下における細胞増殖、生存率、薬剤感受性の比較や細胞周期解析等の基礎データを取得した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りに、解析対象の2つの遺伝子それぞれについてノックアウト(KO)マウスの作製を完了し、表現型の解析を進めたが、Hfm1-/-マウスについては2013年に他グループにより我々の作成したマウスと同様の表現型(減数分裂異常、不妊)が報告されたため、以降の解析はキナーゼ遺伝子E20を優先するという計画に変更した。E20-/-マウスは胚性期から出産第一日目にかけて致死であったため、減数分裂期(及び以降の糖子発生)異常をE20コンベンショナルノックアウトホモ個体の精巣で確認することはできない。このため、不妊モデルマウス系統として知られるW/Wvマウス精巣への移植実験を行う準備を進めた.
|
今後の研究の推進方策 |
新年度はリン酸化プロテオーム解析の条件を決定し、E20のin vivoリン酸化基質の同定、及び既知のin vitro基質についてin vivoでのリン酸化の有無と変動の解析を詳細に行うことで、E20のはたらく分子ネットワークを明らかにする。また、特にクロマチン制御とのクロストークについて詳細に解析するために、上記と並行して、基質として示唆されるクロマチン制御関連分子(ヒストンシャペロン、ヒストンアセチル化酵素、DNA損傷応答タンパク質等)について、E20の有無による時空間的発現や複合体形成の変化を解析し、必要に応じて被リン酸化サイトのアラニン置換や擬リン酸化、部分欠損等の変異体解析を進める。新規の基質が見出されればそれについても同様の解析を行い、併せてこれまでに作出したE20-/-マウス胚及び同-/-細胞で細胞増殖やアポトーシス、細胞周期解析を進めることで、E20の作用機序及びクロマチン制御や初期胚発生における役割の解明を目指す。精子発生への関与については、胎齢18.5日E20-/-胚より採取した前精原細胞を幼若W/Wvマウス精巣へ移植し、十数週後にレシピエント精巣を採取、組織学及び減数分裂マーカーの染色等分子生物学的解析により精子形成能を評価する。
|