研究課題
平成25年度は酸化亜鉛(ZnO)中に不純物ドナーとして導入されたAlとInの局在量子構造の安定性について調査し、不純物AlとInが形成する局所構造が試料の熱処理時の雰囲気条件によって変化することを見出した。その結果をThe fifth international symposium in the series of Asia- Pacific Symposium on Radiochemistry (APSORC 13)にて報告した。以下に詳細を示す。不純物AlとInを導入したZnOについて、異なる雰囲気条件で熱処理を行ったものを摂動角相関測定[1]した結果、ZnO中の不純物Inは空気中での熱処理によりAlと強い会合状態を形成するものの、真空中での熱処理によってその会合は解離し、Inは単独でZnの置換サイトを占有することが示された。またこの解離の現象は、真空と同様に酸素濃度が希薄なアルゴンガス気流中でも観測された。一般にZnOのような酸化物は、希薄な酸素濃度条件下での熱処理によって酸素空孔が形成されやすいと言われており、不純物AlとInの解離も試料内に形成する酸素空孔によって誘起される可能性が高い。その機構としては、酸素空孔が形成されると試料内は陽イオンが過剰な状態となり、陽イオンの静電気的な反発力で不純物AlとInの結合が不安定化するために、AlとInが解離すると考えることができる。また上記の不純物AlとInの解離について、解離の機構をより詳細に理解するために解離の温度依存性の調査を行った。その結果、不純物AlとInの解離の現象は真空中での熱処理の温度が高くなればなるほど顕著になることが分かった。[1] ホスト物質に放射性核種のプローブを導入し、プローブ位置での微視的な構造や性質を調べる分光法の一つ。本研究ではプローブに、ZnOのドナーである111Inを採用した。
2: おおむね順調に進展している
本研究ではAlをZnO中へ固溶させ、均一に拡散させる試料調製法の確立と、ZnO中の不純物の安定性の調査の二つを目的としていた。今年度はZnO中の不純物AlとInの不純物が形成する局所構造について、熱処理中の試料をとりまく雰囲気条件によって、不純物の局所構造が変化することを確認した。またその局所構造変化が、酸素濃度が希薄な条件下での熱処理中にZnOに生じる酸素空孔に誘起される可能性を見出した。このようにZnO中に不純物が形成する局所構造の安定性を決める要因を確認することができたため、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
昨年度に引き続き、ZnO中に導入された不純物AlとInの安定性に着目する。不純物AlとInを導入したZnOの局所構造を様々な温度条件、熱処理時間で熱処理したものを観測し、不純物AlとInの局所構造変化の過程をより詳細に調べる研究に着手する予定である。得られた解離の反応の熱処理時間依存性や、熱処理温度依存性の一連のデータから、局所構造変化の反応の、反応速度や活性化エネルギーを見積もる予定である。
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Proceedings of the Specialist Research Meeting on “Science and Engineering of Unstable Nuclei and Their Uses on Condensed Matter Physics’”
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Hyperfine Interactions
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10.1007/s10751-012-0709-1