研究概要 |
採用初年度は、分子遺伝学的解析のための家系構築とニホンウナギの親子鑑定法の検討を実施した。 ウナギの回遊生態において接岸時期に影響を決める形質である仔魚から稚魚への変態日数に着目し、遺伝学的解析用の家系を作出した。いらご研究所にて完全養殖第2世代のウナギの中で変態の早かった家系の姉妹交配により作出された家系を解析家系とした。日齢30日の個体を150個体の全長、また変態が開始した個体は変態日数を記録し、DNA解析用にエタノール中に保存し、解析用個体225個体のサンプリングが完了した。なお、作出した半数の個体はMAS育種への応用のため、引き続き飼育を継続している。遺伝育種を遂行する上で家系管理は必須であり、そのために必要不可欠な親子鑑定系を確立した。 親子鑑定のため、既報(Tzeng et al. 2001, Ishikawa et al. 2001, Wirth and Bernatchez 2001)の15個のマイクロサテライトマーカーを選定した。本研究ではマルチプレックスPCR法によりマーカー型を決定し、得られたマーカー型を PARFEXver1.0 (Sekino and Kakehi 2011)を用いて解析し、親子判別を実施した。解析には雌3個体と雄15個体を集団自然交配させて作出した家系を用いた。4種類の蛍光 (FAM, NED, VIC, PET)と各増幅産物の大きさの組み合わせにより、1回のPCR反応系で7マーカーを同時に解析することに成功した。解析した子供172個体中145個体で親のペアを識別することが出来た。雌は3個体中2個体が次世代に貢献し、雄は貢献度に差はあるものの集団交配させたほとんどの個体が次世代に貢献していた。
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