研究実績の概要 |
1)キレート剤によるセシウム溶離剤の開発:多量に発生した中・低レベル放射性汚染土壌を低コストで除染するためには,放射性セシウムを化学的相互作用により強力に抽出し,かつ広いpH領域で使用可能な薬剤の探索が不可欠である。合成イミノ酢酸系キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸, イミノ二酢酸, ニトリロ三酢酸, ジエチレントリアミン五酢酸及び生分解性キレート剤である3-ヒドロキシ-2,2’-イミノ二コハク酸(HIDS), エチレンジアミン二コハク酸, L-グルタミン酸-N,N-二酢酸, メチルグリシン二酢酸(MGDA)等のキレート剤を含む化学洗浄剤を,自然土壌から調製したセシウム含有土壌に適用した。すべての種類の化学洗浄剤はシルト+粘土画分の土壌に含まれるセシウムの除去に対して水洗浄以上に有効であり,特にHIDSはセシウムの除去効果が大きいことが分かった。抽出補助剤として,アンモニウム塩の添加を検討したところ,HIDS,塩化アンモニウムをそれぞれ単独で用いた場合のセシウム除去率は25-32 %であったが,両者の混合溶液を用いた場合は最大41 %までセシウム除去率が向上した。キレート剤によるセシウム吸着担体の溶解と,アンモニウムイオンによる鉱物粒子上のセシウムイオンの置換が相乗的に働き,洗浄効果が高くなったと考えられる。 2)化学除染剤の環境影響評価:洗浄後の土壌に残存するキレート剤は,土壌中金属の自然循環を乱すことが懸念されている。洗浄後の土壌に残存するキレート剤を高速液体クロマトグラフィーを用いて定量したところ,1週間後に合成キレート剤は93~94 %残存していたが,MGDAを除く生分解性キレート剤の残存率は69~86 %であり,土壌洗浄において生分解性キレート剤は,イミノ酢酸系の合成キレート剤と比較して環境残存性が小さいことが示された。
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