研究課題/領域番号 |
13J05865
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
小川 智弘 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 超軽量X線望遠鏡 / ドライエッチング / 高温塑性変形 / 原子層堆積法 / カリ一ナ星雲 / 大質量星形領域 |
研究概要 |
日本が世界をリードするマイクロマシン(MEMS)技術を用いた、従来のX線望遠鏡に比べて一桁以上軽く、秒角の角度分解能を達成しうる、究極の軽量望遠鏡を開発している。この望遠鏡は将来の木星探査衛星JMOや地球磁気圏探査衛星GEO-Xなどに搭載することを目的としている。 MEMS技術の一つ、ドライエッチングを用いて数百μm厚の薄いシリコン基板に、幅20μm程度の微細な貫通穴を多数開け、その側壁をX線反射鏡として用いる。ドライエッチングではX線反射に必要とされる数nm rms以下の滑らかな側壁の実現は困難なため、高温アニールで平滑化し、基板を高温塑性変形で球面に曲げて、望遠鏡の1段分とする。曲率半径の違う基板を2段に重ねることで宇宙X線で使用されるWolter I型望遠鏡となる。25年度の開発では、搭載衛星の要求値に合う性能を達成するために製作プロセスおよび、X線測定装置に以下の改善を行った。製作段階のドライエッチング行程を見直した。反射率とエネルギーバンドの拡大のため、原子層堆積法により、イリジウムを成膜した。2段の組み立て装置を改良した。これらの改善を行い製作した新たな望遠鏡に、X線照射実験を行った。A1-Kα1.49keVの特性X線による全面照射イメージを取得した。有効面積は、32mm^2となり旧型より30倍以上、角度分解能は、4,2分角となり3倍改善した。 広がったX線に対して世界最高の分光性能を持つ「すざく」衛星を用いて、代表的な大質量星形成領域であるカリーナ星雲の南西部の観測データの解析では、モデルフィットを行ったところ南西部がこれまでに観測されたカリーナ星雲内の他の二つの領域より吸収が低いことが分かった。この原因として、分子雲が少ないことによる吸収の低下、もしくは星風などが周囲の分子雲と衝突して生じる電荷交換反応が考えられる。本年度、電荷交換反応のシミュレーションを行いその可能性を探った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
搭載を目標とする衛星の打ち上げ時期は2020年頃である。このため、打ち上げまでに行っ様々な環境試験を考慮すると、プロトタイプの完成は2016年までに行う必要がある。 現在は計画にあるWolter I型望遠鏡の組み立てを終えており、各種の性能の向上段階にあるため順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
超軽量X線望遠鏡の開発では、有効面積と分解能の向上が必要とされる。このため、ドライエッチングプロセスと高温塑性変形および、原子層堆積法の見直しを行う。 大質量星形成領域の研究ではカリーナ星雲南東部の吸収が低い原因を探る。
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