研究課題
本年度は、博士論文に向けた研究を行った。研究テーマは、マイクロマシン技術を用いた、次世代超軽量X線望遠鏡の開発。これはマイクロマシン技術を用いた独自の手法であり、ドライエッチングを用いて約300 um 厚の薄いシリコン基板に、幅約 20 um の曲面穴を開け、側壁を 反射鏡として用いる方法である。X線反射鏡には um スケールで約 1 nm rms を切る表面粗さが求められるため、側壁を平滑化する高温アニールを加え、さらに天体からの平行光を集光するため高温で球面に塑性変形する。反射率を上げるため Ir 膜付けを行い、異なる曲率で変形した2枚の基板を重ねれば、X線望遠鏡でよく用いられる Wolter I 型望遠鏡となる。本手法では、鏡が微細なため、世界で最軽量を実現できる。本望遠鏡は、バイナリーブラックホール探査衛星「ORBIS」に搭載が検討されている。博士論文ではこれまで問題とされてきた、角度分解能と有効面積が設計値を満たさないこと、焦点距離は設計焦点距離より伸びる原因についての調査を行った。方法としては、光線追跡シミュレーションを用いて過去のX線照射実験結果の再現を行った。光線追跡シミュレーションとは、光子1個1個に対して幾何的な経路を計算するものである。この光線追跡シミュレーション中のパラメータサーチにより、実験結果を再現する要因を探した。その結果として、反射の際に反射方向に角度の広がりを持つ場合に、実験結果をよく満たし、このパラメータが角度分解能と有効面積および焦点距離に大きく影響することを明らかにした。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Microsystem Technologies
巻: 22 ページ: online first
DOI 10.1007/s00542-016-2906-3