研究課題/領域番号 |
13J05888
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中島 悠介 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | アラブ首長国連邦 / 高等教育 / トランスナショナル / 質保証 |
研究概要 |
本研究は全体として、外国大学の分種がUAEの高等教育セクター、UAE社会においてどのような影響を与えうるのかを明らかにすることを目的としている。その中で本年度は、UAEにおける高等教育質保証の制度的な動向を把握するために、UAEにおいて国立大学に相当する連邦立大学と、UAEを構成する首長国の一つであるドバイのフリーゾーンにおける外国大学分校の質保証制度の展開について研究を進めた。この2つを対象として選定した理由は、UAEでは国民が全人口の約1割を占めるに過ぎず、連邦立大学に在籍する学生の多くがUAE国民で占められている一方、外国大学分校に在籍する学生は9割以上が外国人であることから、それぞれのセクターに応じた展開が見られることが想定され、UAE社会と高等教育の関わりを捉える上で重要な視点になると考えたためである。 これらの研究成果の公表は、2013年7月の第49回日本比較教育学会における口頭発表「ドバイのフリーゾーンにおける外国高等教育機関誘致-二元的質保証システムを中心に-」、『京都大学大学院教育学研究科紀要第60号』「アラブ首長国連邦における連邦立大学の内部質保証-UAE大学を事例として-」などにおいて行った。国家との密接な関係から第三者質保証機関による評価を免除され、独自の内部質保証システムを構築していた連邦立大学は、UAE資格枠組みの適用を通し、民間高等教育機関を含めた国家的な高等教育の質の統合に緩やかに組み込まれようとしていた。一方で首長国の制度を基盤とした外国大学分校については、質保証の方法やメカニズム、卒業資格の認定等の点で、国家的な質保証からの独立の度合いをいっそう強めていることを明らかにした。以上を明らかにすることを通し、UAEが国家として高等教育の質の統合を目指す一方、首長国(特にドバイ)は首長国としての権限や独自性を維持することを目的に、外国大学分校を統制しようとしていることを指摘したことに意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、学生数においてUAE国民が多数を占める連邦立大学と、外国人が多数を占める外国大学分校における質保証の制度的展開を考察し、これらの成果を学会での口頭発表、論文にも発表できたため、UAE全体として制度的方向性を明らかするという目的についておおむね達成されたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進について、本年度の研究で明らかにしたUAEの高等教育の制度的動向を基盤とし、より具体的な外国大学分校における運営戦略を明らかにする。特に、一般的に途上国に積極的に進出しているとされる欧米系大学分校のみならず、UAEとの社会・経済的なっながりが強いインドからの外国大学分校や、文化的なつながりが強いパキスタン、イラン、レバノン等からの外国大学分校について取り上げ、それらのUAE高等教育における役割を明らかにしたい。また、今後はUAEにおいて政治・経済的に中心的な役割を果たしている首長国であるアブダビ・ドバイのみではなく、より周辺の首長国における外国大学分校の運営戦略についても引き続き研究を進める。
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