研究課題/領域番号 |
13J05888
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中島 悠介 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アラブ首長国連邦 / 高等教育 / 外国大学分校 / 中東 |
研究実績の概要 |
本研究は全体として、外国大学の分校がUAEの高等教育部門、UAE社会においてどのような役割を果たしうるのかを明らかにすることを目的としている。その中で本年度は、UAEにおける高等教育の制度的な動向が外国大学分校に対してどのような影響を与えているのかを明らかにするために、連邦を構成する首長国であるアブダビ・ドバイに立地する分校の管理運営構造の比較考察や、UAEと経済的に強いつながりを持つインド系高等教育機関の運営戦略の比較考察を行った。 これらの研究成果の公表は、2014年7月の日本比較教育学会第50回大会における口頭発表「アラブ首長国連邦における外国大学分校の比較考察-転換期における規制主体の多様化と管理運営構造を中心に-」、『京都大学大学院教育学研究科紀要第61号』「ドバイにおける外国高等教育機関の展開に関する一考察-インドからの分校の運営戦略を手がかりとして-」などにおいて行った。アブダビ・ドバイ、さらに連邦が設定する外国大学分校の管理運営に関する規定には、教学部門や経営部門の機能やメンバー構成に明確な差異があり、事例研究を通してこれらの差異が外国大学分校の管理運営構造にもあらわれていることを明らかにした。また、ドバイにおけるインド系高等教育機関の海外分校の運営戦略の比較考察では、インド本国の規制部門とUAEにおける規制部門の影響により、これらの分校の運営戦略に差異が見られ、また想定されている学生集団や進路等も異なっている点で、ドバイにおけるインド系高等教育機関の多様化の実態を明らかにした。 以上を明らかにすることを通し、UAEでは連邦・首長国レベルでの高等教育の規制主体の多様化に加え、本国における規制主体の影響を受けながら外国大学分校の展開が促進され、外国大学分校も戦略的にそれらの制度を選択していることを指摘した点に意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、アブダビとドバイに立地する外国大学分校における管理運営構造と、UAEと経済的に強いつながりを持つインド系高等教育機関の運営戦略を研究し、これらの研究成果を国内外の学会での口頭発表、論文にも発表できた。そのため、UAEの高等教育の制度的方向性を明らかにし、それらの外国大学分校への影響を考察した点で、UAEにおける高等教育機関レベルでのトランスナショナル高等教育の実態を明らかにするという当該年度の目的について、おおむね達成されたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進について、本年度の研究で取りあげたUAEの外国大学分校レベルでの比較考察をさらに発展させ、学生や教員といった当事者の観点から研究を深める。特に、今後はUAEの比較対象としてカタールも取りあげつつ、学生や教員に対してアンケート調査やインタビュー調査を実施し、分校での学習動機や学習状況、イスラームなどの現地の文化との調整などの観点から研究を遂行する。これまでUAEにおいて主に政治・経済的な視点から研究を進めてきたことに対し、国民が人口の少数を占めるという中東湾岸地域の社会的特徴が、学生の分校での就学動機にどのような影響を与えているのか等、当事者の視点を含めて外国大学分校の実態を明らかにしたい。
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