本研究は全体として、外国大学の分校がUAEの高等教育部門やUAE社会にどのような影響を与えうるのかを明らかにすることを目的としている。その中で本年度は、UAEや隣国のカタールにおける外国大学分校に所属する学生に焦点を当て、分校に所属する学生の就学動機や分校に対して感じるメリット・デメリットを明らかにするとともに、一般的に外国人学生を多く抱える外国大学分校の状況に対し、UAE国民が多く就学する分校に焦点を当て、それらの分校の特質を検討した。 これらの研究成果の公表は、2015年6月の第51回日本比較教育学会での口頭発表「カタールの外国大学分校における学生の就学動機」や2016年1月の10th-Comparative Education Society of Asiaでの口頭発表「Emiratis and International Branch Campuses in the United Arab Emirates」などにおいて行った。カタールにおける外国大学分校への就学動機は学生の国籍によって差異が現れ、例えばカタール人学生はカタールの社会環境を高く評価し、分校の選択には教員や友人の意見を尊重していたことなどがわかった。またUAEにおけるムハンマド5世大学アグダル校やサンジョゼ大学といった自国民が多く就学する分校では、提供国と受入国で共通に普及している法学派や法律体系に沿って教育プログラムが提供されていることを明らかにした。 以上の研究では、UAEやカタールに立地する外国大学分校に就学する自国民が、自身が置かれている社会的環境を維持しつつ、将来的に自国で働くことを想定し、それらの就労に繋がる外国大学分校に就学することを重視しており、これらの国の外国大学分校に一般的に多く就学するとされる外国人学生とは、異なる価値観を持って外国大学分校に所属していることを指摘した点に意義がある。
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