研究課題/領域番号 |
13J05890
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鳥谷部 尚之 北海道大学, 大学院生命科学院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 肝硬変治療 / siRNA / ドラッグデリバリーシステム / 薬物送達学 / リポソーム |
研究概要 |
肝硬変に対する根本治療は現在もまだ確立されてはいない。そこで、肝炎全般の治療を目的として標的遺伝子を特異的に抑制可能なsiRNAを用いた治療法を考えている。siRNAは疾患と深くかかわる原因遺伝子のみを直接抑制可能であるため、低分子化合物よりも優れた効果があると期待されている。しかし、核酸を用いた治療を行う上で、核酸デリバリーシステムは重要な技術である。特に、次の2つのシステムは効率の高い核酸デリバリーには欠かすことが出来ない。1つめは、疾患の治療部位を標的化出来るシステム。つまり、優れた体内動態を持つシステムである。そして、2つめは、細胞内の作用部位(細胞質)まで送達し、単位核酸分子の活性が高いシステムであり、細胞内動態を改善することである。本研究で提案する時空間制御型ナノキャリアとは、体内動態の改善を考慮した空間制御型システムと細胞内動態に着目した時間制御型システムの融合したキャリアである。しかし、近年になり肝臓血管内皮細胞が肝炎・肝硬変の原因であることが明らかになってきた。肝硬変の根治を目指すには、肝臓血管内皮細胞を標的とする治療が必要であると考えられるが、肝臓血管内皮細胞を標的とするキャリアは皆無である。そのため、空間制御システムの構築として、肝臓血管内皮細胞を標的可能なキャリアを作成した。これまで、行われていた肝臓の実質細胞を標的とする研究では、キャリアは肝臓血管内皮細胞に存在するフェネストラ(直径120nm前後)を通過可能な小径粒子であることが必須条件であった。一方、血管内皮細胞自体を標的化する場合は、肝実質細胞への移行性を低下させるためにむしろ粒径は150nm以上であり、かつ肝臓血管内皮細胞を選択的に標的可能なリガンドの搭載が必須となると考えられた。本研究の最終目標は、時空間制御型ナノキャリアを用いた肝炎・肝硬変の治療法の構築である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
siRNAを内部に封入した時空間制御型ナノキャリアの構築に成功した。 肝硬変モデルマウスにおいて、siRNAの特定遺伝子に対する抑制効果を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
siRNA封入時空間制御型ナノキャリアの肝硬変に対する治療効果を評価する。 評価は、標的遺伝子の抑制だけではなく、その他肝炎で指標となるALT、AST、病理組織学的にも評価する。
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