研究概要 |
AlN薄膜は薄膜共振子の圧電薄膜として利用され, 移動体通信用フィルたなど多くの産業応用がなされている. 本研究で形成を試みたc軸平行もしくはc軸垂直AlN薄膜を用いた極性反転多層構造を持つ共振子では, 電界をかけた際, 各層の 上部に対して下部は逆方向に歪むため, 高次モードで共振する. そのため, 将来の高周波帯への移行, ハイパワーにおける動作にも対応可能となる. 従来, 結晶方位, 極性制御に用いられるエピタキシャル法では, 2層目以降の極性制御が不可であるため, 極性反転多層膜の形成は困難である. これまで, 成膜中のイオンビーム照射によるAIN薄膜の結晶方位制御, c軸平行AlN薄膜形成の達成している. イオンビーム照射のエネルギーや方向を制御することで, 結晶方位のみならず, c軸平貨およびc軸垂直膜の極性方向も制御でき, 極性反転多層膜が形成できるのではないかと考え, 本研究を行った. [c軸平行極性反転AlN多層膜] c軸平行膜成膜中の高エネツギ一イオンビームの入射方禰により極性の向きも制御可能と考えた. イオンビームの入射方向を各層で180°変化させることによって4層のc軸平行極性反転AlN多層膜の形成を試みた. このAlN多層膜共振子では4次モード共振が見られた. イオンビームの入射方向を制御することでc軸平行極性反転AlN多層膜の形成可能であることがわかった. [c軸垂直極性反転AlN系多層膜] 成膜中の低エネルギーイオンを(0001)面に垂直に入射することでc軸垂直膜の極性制御が可能ではないかと考えた. そこで, ターゲット上に酸化物粒を配置し, c軸垂直AlN系膜を作製した. 酸化物がスパッタされることで負イオンが発生し, 基板に向かって加速, 照射される, このc軸垂直膜の極性を評価したところ, イオン照射により極性が通常のAl極性からN極性へと反転していることがわかった.
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今後の研究の推進方策 |
2年目に計画している「異常な3次元配向構造をもつc軸平行AlN多層膜の形成」では螺旋構造を持っAlN薄膜を形成する. その際円偏光二色性が実現できる螺旋構造の巻数やピッチなどの調節を行う. 一方, AlNの代わりに結晶化が容易なウルツ鉱ZnOに薄膜材料を変える可能性もある, 「c軸垂直極性反転AlN系多層膜形成」では, 新たに開発に成功したc軸垂直AlN系薄膜の極性制御法を用いてc軸垂直極性反転AlN系多層膜形成を試みる、また, イオン照射によりc軸垂直AlN系薄膜の極性が反転した原因について考察するための実験を行う予定である.
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