研究課題/領域番号 |
13J05893
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
澤田 洋平 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 陸上生態系 / 陸面モデル / マイクロ波リモートセンシング / データ同化 / 干ばつ解析 |
研究概要 |
本研究課題は、「衛星観測を援用して水循環と陸上の植生動態が相互作用するようなモデルを構築し、世界最高水準の気象-水文-陸上生態系カップリングシステムを開発すること」(申請書より)を目的としている。平成25年度は特に水文過程と陸上生態系の相互作用を再現する陸面モデルの開発に注力し、おおむね終了したといえる。具体的には(1)現地観測に基づいた、マイクロ波リモートセンシングを利用した植生動態観測アルゴリズムの構築を行い、(2)高度化された水文-陸上生態系結合モデルの精度を、マイクロ波衛星データを同化することで改善するアルゴリズムを構築した。 加えて、構築中のシステムを社会問題の解決に応用するケーススタディを先取りして実施した。具体的には、(3)水循環と生物循環を考慮した河川流域スケールの統合的な干ばつ解析を実施した。 (1), (2)における技術開発(水文-陸上生態系結合同化システム : CLVDAS)によって、水循環と植物の成長・枯死の間にある相互作用に対する理解が深まるとともに、現地観測に裏付けされた高度なアルゴリズムを用いた衛星観測をモデルの推定値と同化させることで陸域の水循環、植生動態の予報精度を大幅に改善することに成功している。 (3)の研究はこうした技術開発が社会問題の解決に以下にして寄与するかを示すものである。従来干ばつ解析は降水量・河川流量等の水循環からその定量化が論じられることが多かった。実際には干ばつは食糧不足などを引き起こすために、植生の成長過程なども含めて論じられるべき現象である。本研究課題における技術開発は水循環と植物の循環を同一のプラットフォームで扱うことを可能にするもので、今回開発したシミュレーション技術によって干ばつが植物に与えるダメージを含めた、より統合的な干ばつ解析が可能になり、今後の干ばつ予測・モニタリングに貢献できる研究であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は3年間の研究計画の1年目にあたる。申請書に記載した1年目の計画の中には一部未達のものもあるものの、計画を若干変更し、3年目に行う予定であった開発したシステムの社会問題への適用を先取りして行った。そのため全体としては3年間で当初の目的を達成できるペースで進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に開発がほぼ完了した水文-陸上生態結合同化システムの精度検証を行い、システムの頑健性を高めていく。また特に干ばつの定量化とその予報に着目して、今回開発したシステムがどのように社会問題解決へ貢献できるかを具体的な形で示していきたい。本来は2年目までには大気モデルとCLVDASを結合させ、大気の水循環も同時に解くシステムを開発する予定であったが、その部分を後回しにして、先に本来3年目に予定されていた社会問題(干ばつ)解決への応用を実施可能な部分から優先的に取り組む予定である。
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