樹状突起スパインにはシナプス後肥厚部(PSD)や細胞骨格が存在し、これらが互いに作用しあうことで興奮性シナプスの機能を調節している。アクチンはスパインの形態を直接的に制御し、またPSDタンパク質の足場となる重要な細胞骨格である。もう一つの主要な細胞骨格である微小管は、その先端が一部のスパインに一過的に侵入することで興奮性シナプスの発達を促進すると言われている。しかしスパインへ侵入する微小管とシナプスの発達を結びつける分子メカニズムはよく分かっていない。 申請者はこれまでの研究で、細胞骨格相互結合タンパク質であるACF7が興奮性シナプスの発達を制御することを明らかにしてきた。この結果を更に発展させ、ACF7がスパインの形態を制御する分子メカニズムの解明を目指している。スパインにおいてもACF7が微小管とアクチンの相互作用を制御するかを検証するために、全反射顕微鏡を用いた微小管先端のタイムラプスイメージングを行った。新たに温度・CO2制御ステージシステムを導入することで観察条件を改善し、先行文献で報告されている、微小管の先端が一部のスパインに侵入する様子が観察出来た。現在は、ACF7の発現量を亢進または抑制した際にスパインへ侵入する微小管の動態が変化するかを検証している。 ACF7タンパク質を急速に分解・形成させることで、微小管とアクチンがACF7によって相互結合された際にシナプスで起こる変化を経時的に明らかにすることが可能になる。薬剤依存的にタンパク質分解を誘導する実験系に低発現プロモーターを応用することで効率的なタンパク質分解が可能になった。
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