研究課題/領域番号 |
13J05918
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
坂東 桂介 早稲田大学, 政治経済学術院, 特別研究員PD
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キーワード | マッチング理論 / 安定マッチング / 外部性 / 動的環境 |
研究概要 |
当該年度ではマッチング理論に関する研究を行った。マッチング理論では男性と女性、企業と労働者のような二tuの異なる集団に属する人々の間のマッチング方法を分析する。マッチング理論における主要な解概念は安定マッチングであり、これは「いかなるプレイヤーのペアも新たにマッチングを結びなおすことで効用が増加しない」ようなマッチングである。私の研究課題では、外部性のある環境および動的環境におけるマッチング問題の安定マッチングの性質の分析を行なっている。 外部性のある環境では、企業が労働者を雇うことによって得られる利潤が、ライバル企業の雇っている労働者にも依存する状況を考察する。特に、参加人数が多い市場における安定マッチングの性質を分析することを目的としている。当該年度の研究では、より基礎的な結果を得るために、参加人数が有限の時の安定マッチングの性質を深く分析し、"A modified deferred acceptance algorithm for many-to-one matching markets with externalities among firms"という論文を完成させた。この論文では「企業の選好にいくつかの条件を仮定することで、労働者最適安定マッチングという全ての労働者にとって最も好ましい安定マッチングが、修正ゲールシャープレイアルゴリズムとよばれるアルゴリズムで見つけられる」という結果が証明されている。この論文は査読付き国際学術誌のJournal of Mathematical Economics誌に採択された。 動的環境におけるマッチング問題では、マッチングを与えられた期間の間に繰り返し行う状況を考察する。新入社員のジョブローテーションなどが応用例である。ジョブローテーションでは「各新入社員は、各期ごとに異なる研修先を回らなくてはいけない」という制約が存在する。しかし、従来の理論ではこの制約は考えられていない。そこで、本研究では制約を考慮したマッチング問題を定式化し望ましいマッチング方法を分析した。当該年度の研究では制約のある環境では安定マッチングがプレイヤーの厚生の面では必ずしも望ましくないことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外部性があるマッチング問題および動的環境におけるマッチング問題について、研究目的を完全に達成できたとはいえないが、今後の研究の基礎となる結果を得たという点では、おおむね順調に進展したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
外部性のある環境では「市場に参加している人数が十分に大きいときに安定マッチングは存在するのか」という問題を考察する。この問題を考察するにあたり昨年度完成させた論文"A modified deferred acceptance algorithm for many-to-one matching markets with externalities amoag firms"で使われている手法が有効であると考えられるので、この論文を基礎に分析していく。動的環境のマッチング問題では、制約付きのマッチング問題における望ましいマッチングを見つける方法を明らかにする。特に、安定性とパレート最適性をある程度両立させるようなマッチングを見つけるアルゴリズムを明らかにする。
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