研究課題
本研究では、流産起因菌であるListeria monocytegenes (Lm)とマウス胎盤の免疫担当細胞である栄養膜巨細胞(Trophoblast Giant Cell: TGC)を用いて、流産起因菌の胎盤感染機序および病態誘導機序の解明を介した「細胞内寄生菌の体内伝播を制御するトラフィッキングシステムの解析」に取組んだ。これまでの研究により、LmのTGCへの侵入にはMitogen-activated protein kinase(MAPK)シグナル伝達の活性化が必要であることを見出した。一方で、Lm感染後には、MAPK family proteinの脱リン酸化誘導が確認された。さらに、この脱リン酸化誘導がLmの病原因子の一つであるListeriolysin O (LLO)に依存することおよび細胞保護作用を有するheme oxygenase 1 (HO-1)の発現量の低下を引き起こすことが確認された。本年度は、Lm感染性流産におけるMAPK family proteinの脱リン酸化誘導と感染性流産との関連性についてより詳細な解析を行った。その結果、脱リン酸化阻害剤処理によりLm感染によるHO-1の発現量の低下、細胞障害および細胞死誘導を回避できることが示された。また、脱リン酸化誘導の菌体責任因子と示されたLLOについて、流産モデルマウスを使用しLm感染性流産への関与を確認した。その結果、すべての病原性を有するLm EGD株の感染では、流産が誘導されるのに対して、LLO非産生性の欠損変異株の場合は、流産の誘導が認められなかった。これらの結果から、LLOはLm感染性流産に必須の病原性因子であり、LLOよるMAPK family proteinの脱リン酸化が引き金となり、HO-1の発現量の低下を介して、胎盤細胞死が促進され流産が誘導されることが示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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frontiers in Microbiology
巻: 6 ページ: 1145
10.3389/fmicb.2015.01145