研究課題/領域番号 |
13J05951
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鳥形 康輔 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | Lats2 / エピジェネティック制御 / PRC2 / TALEN |
研究実績の概要 |
がん抑制遺伝子Lats2がヒストン修飾酵素複合体PRC2を介してエピジェネティック制御に関与するという昨年度の研究状況を踏まえ、Lats2による新規な転写制御機構に関して本年度は主に1)に軸足を移し解析を実施した。
1) クロマチン修飾制御を介した転写制御:昨年度、主にマウス細胞のマイクロアレイ解析から見出したLats2欠失とPRC2の機能破綻との相関について、siRNAや阻害剤によるLats2やPRC2構成因子の阻害との整合性を検証した。また現象の普遍性を検証するためにヒトがん細胞HeLa-S3に対して人工制限酵素TALENを用いてLATS2遺伝子をノックアウトした細胞を新規に樹立し解析した。結果としてヒトとマウス両方でLats2の欠失によりPRC2とその責任修飾であるH3K27me3の減弱、それに伴う標的遺伝子の転写亢進が引き起こされることを明らかにした。 2) 多様なZnF型転写因子を介した転写制御:当初想定した当該モデルより上述のエピジェネティック制御による転写制御がLats2下流のシグナルとして重要な役割を果たすことが示唆される。一方でZnF型転写因子がPRC2などクロマチン制御因子のリクルーターとして機能する可能性も踏まえ、既知のZnF型転写因子であるZEB1に注目しLats2との相互作用を検証した。結果としてLats2はZEB1のZnFドメインをリン酸化し上皮間葉転換を制御することを見出した。
本年度は1)に挙げた成果を中心にふたつの国内学会でポスター発表による成果の発信を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Lats2による下流遺伝子の包括的な転写制御の仕組みについて、Lats2がヒトとマウス両方でエピジェネティック制御因子であるPRC2の制御に正方向に作用することを示した(現在、論文投稿中)。またその過程で人工制限酵素TALENを用いてヒトがん細胞においてLATS2遺伝子をノックアウトすることに成功した。現在は樹立したノックアウト細胞株を用いたChIP-seqやRNA-seqといった網羅的な解析や生化学的解析を準備中である。また当初の作業仮説であるZnF型転写因子のリン酸化による転写制御に関しても、新たにLats2が上皮間葉転換制御因子であるZEB1をリン酸化制御することを見出した。全体として研究は計画以上に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
Lats2のエピジェネティック制御機構への作用形態・標的因子についてより詳細な解析を進める。具体的には本年度に樹立したLATS2ノックアウトHeLa-S3細胞を用いて、ChIP-seqやRNA-seqによる網羅的な解析を実施し、Lats2依存的なエピジェネティック制御の影響下にある遺伝子群を同定して機能解析を行い、それらの生物学的意義を検証する。またそれらの知見をもとに、がんゲノミクスデータ等との相関解析を行い、実際の疾病との関連性も検証する。
|