研究課題/領域番号 |
13J05975
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森川 真夏 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | クライオ電子顕微鏡 / キネシン / 微小管 / KIF5C / チューブリン / 細胞内輸送 / 神経 / 分子モーター |
研究実績の概要 |
神経細胞において分子モーターキネシン(KIF5C)が軸索選択的に物質を輸送する構造的なメカニズムを明らかにするため、GTP型微小管(軸索に多いタイプ)とGDP型微小管のそれぞれについて、KIF5Cとの複合体を急速凍結し、クライオ電子顕微鏡構造解析を行った。 微小管はブタ脳から精製したチューブリンからGTP型微小管とGDP型微小管を重合した。KIF5Cは大腸菌で発現し、IMAC, CIEXにて精製した。これらをグリッド上で混ぜ、急速凍結後、クライオ電子顕微鏡で撮影した。得られた二次元画像は、Simulated Annealing法を取り入れた単粒子解析により三次元再構成を行ない、KIF5C-GTP型(GMPCPP)微小管については8.9オングストローム、KIF5C-GDP型(taxol-GDP)微小管については9.8オングストロームの三次元構造を得た。 これらの構造から、KIF5Cが微小管に結合すると、KIF5Cと微小管の双方で構造変化が起きることを確認した。微小管側では、KIF5Cの結合によりチューブリンの並びが縦に強められる構造変化が起きていた。また、KIF5C側では、微小管結合表面のループ(L11)がGTP型微小管の外側表面と強い結合を形成していた。この強い結合は、L11変異体の一分子解析からもGTP型微小管の認識に必要であることを突き止めた。さらにKIF5Cのモーターの作動機構について、ヌクレオチドフリー状態の構造を明らかにした。この構造はヌクレオチドの交換が効率的に起きる状態をとっており、これがKIF5Cにとって、GDP型微小管よりもGTP型微小管に高い基質特異性を持つ構造的な基盤と考えられる。これらの結果を、EMBO J. 2015 Mar 16に筆頭著者としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Simulated Annealing法を取り入れた単粒子解析により三次元再構成を行い、KIF5Cと微小管の構造変化を解析したほか、新たにFrealignを用いたHelical再構成法による解析を進め、より高い解像度でKIF5Cと微小管の二次構造要素を可視化している。
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今後の研究の推進方策 |
高い解像度でより詳細にKIF5C-微小管複合体の構造を明らかにするため、新たにFrealignを用いたHelical再構成法による解析を進めている。現在、KIF5-GMPCPP微小管についてHelical再構成法で、すでに7オングストローム台の解像度で構造が見えているが、今後の精密化でさらに詳細な構造解析が期待できる。2つのサンプルを異なる解析法で構造を再構成することで、解析法の妥当性についても議論する予定である。 また、これまでGDP型の微小管を扱う際には、微小管の安定化剤であるtaxolを添加することが通常であった。しかし、この安定化剤の存在がGDP型の構造に影響を与えている可能性は排除できていない。そこで真のGDP型の微小管の構造を得るため、taxol非存在下での微小管とKIF5Cの複合体の解析も始めている。 さらに微小管の脱重合に関わる分子モーターについて、脱重合活性を持つ構造的な背景を解明することを目的に、様々なヌクレオチド状態にある脱重合モーターと微小管の複合体の構造を解くことも始めている。
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