モーター分子KIFと微小管の複合体を高解像度で観察することは細胞内輸送の分子メカニズムを解明するため、クライオ電子顕微鏡を利用し、1)KIF19Aの微小管脱重合活性と運動性の分子メカニズム、2)KIF5Cによる微小管への協同的結合の分子機構 の研究を行った。試料は理化学研究所横浜キャンパスのTecnai Arcticaクライオ電子顕微鏡で撮影し、微小管のらせんパラメータをRuby Helixプログラムで決めたあと、Frealignプログラムのヘリカル再構成法により解析した。各試料について数万~数十万粒子のαβチューブリンKIF三量体から最終構造を得た。 1)微小管に沿った運動に加えて、微小管の脱重合に関わる分子モーターKIF19Aについて、taxol-GDP微小管との複合体を作成し、クライオ電子顕微鏡法にて7.0 オングストロームの解像度の構造を解いた。この結果、KIF19Aは、微小管先端の曲がったチューブリン構造にも結合が可能なフレキシブルなL8ループと、微小管との結合と運動に関わるL12ループ、さらに脱重合型KIFに特徴的な長いL2ループを介して、微小管と複合体を形成していることが明らかになった。 2)Taxolなどの微小管安定化剤を入れていないGDP型微小管は、ATP存在下でKIF5Cが結合すると、KIF5C親和的な性質を持つことが知られている(KIF5の協同的結合)。この現象の構造的な背景を探るため、様々なヌクレオチド状態の微小管とKIF5Cの各複合体構造を5 ~ 7 オングストロームの解像度で解いた。その結果、KIF5Cと微小管のヌクレオチド状態によって、微小管のピッチが伸長することを明らかにした。この結果は、KIF5Cの運動に伴って微小管が構造変化をし、この微小管の構造変化がさらにKIF5Cの運動に影響を与えることを示唆している。
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