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2014 年度 実績報告書

ムチン型糖鎖転移酵素GALNT3によるインフルエンザウイルス増殖制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 13J05979
研究機関京都大学

研究代表者

中村 祥子  京都大学, ウイルス研究所, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードインフルエンザウイルス / ムチン / GALNT3 / O型糖鎖 / ウイルス感染 / ゲノム転写・複製
研究実績の概要

昨年度までの研究で私たちは、A型インフルエンザウイルス感染細胞において、二種類のmiRNAの発現が減少し、ムチン型糖転移酵素GALNT3が有意に発現上昇することを証明した。また、これらmiRNAは、GALNT3 mRNA 3' UTRをターゲットとしてGALNT3の発現を制御していることが明らかとなった。今年度の研究では、GALNT3の基質であるムチンの発現およびムチン型糖鎖修飾の変化について主に解析した。その結果、三次元培養法で培養したヒト由来上皮細胞にWSN株(H1N1)が感染すると、GALNT3とムチン(MUC1)の発現量が有意に上昇した。次に、PR8株(H1N1)が感染したヒト由来肺胞上皮細胞(A549細胞)を用いて、レクチンマイクロアレイ解析により膜タンパク質の糖鎖修飾を網羅的に分析した。その結果、O型糖鎖構造を認識して結合するレクチンについて、糖鎖修飾が有意に増加した。GALNT3安定発現細胞株においても、同様の結果が得られた。これらの結果から、ウイルス感染によって発現が上昇したGALNT3は、ムチンの発現を促進させるとともに、O型糖鎖修飾も顕著に増強することが示された。
これまでの研究で、GALNT3は、A型インフルエンザウイルス感染細胞内において、ウイルスの転写・複製を促進している可能性が示唆された。本研究では、Galnt3ノックアウトマウスから、マウス胎児繊維芽細胞(MEF細胞)を樹立し、ウイルス感染実験を行うことにより、ウイルス複製への影響を詳細に解明することを試みた。その結果、PR8株感染MEF細胞では、野生型において、Galnt3の発現が上昇した。Galnt3ノックアウト型では、野生株と比較してウイルス遺伝子とウイルス力価の両者ともに有意に減少した。Suita株(H3N2)感染実験においても、同様の結果が得られた。これらの結果から、Galnt3をノックアウトした細胞にインフルエンザウイルスが感染すると、ウイルスの複製が有意に減少することが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の計画通り、レクチンマイクロアレイ法を用いたムチン型糖タンパク質の糖鎖修飾解析では、A型インフルエンザウイルス感染細胞において、GALNT3の発現とともにムチン型糖鎖が有意に上昇する結果が得られた。GALNT3安定発現細胞株においても、同様の結果が得られたことから、GALNT3の糖鎖修飾する酵素活性が促進している可能性が示唆された。これに加えて、Galnt3ノックアウトマウスから樹立したMEF細胞のウイルス感染実験において、ウイルス遺伝子の複製が顕著に減少したことから、発現上昇したGALNT3は、ウイルスの複製を促進することが明らかとなった。以上の結果から、当初の計画以上に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

平成27年度においては、A型インフルエンザウイルス感染におけるGALNT3とムチンの機能を生体レベルにおいて明らかにする。GALNT3ノックアウトマウスにPR8株を感染し、病態の変化やウイルス伝播を通じたGALNT3とムチンの機能解析を行うことで、生体防御機構やウイルス増殖への影響を検討することを計画している。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2015 2014

すべて 学会発表 (5件)

  • [学会発表] ムチン型糖転移酵素Galnt3ノックアウトマウスを用いたA型インフルエンザウイルス感染動態の解析2015

    • 著者名/発表者名
      〇中村祥子、堀江真行、大道寺智、本田知之、中屋隆明、小守壽文、朝長啓造
    • 学会等名
      4th Negative Strand Virus-Japan Symposium
    • 発表場所
      沖縄ラグナガーデンホテル(沖縄県宜野湾市)
    • 年月日
      2015-01-19 – 2015-01-21
  • [学会発表] ムチン型糖転移酵素Galnt3ノックアウトマウスを用いたA型インフルエンザウイルス感染動態の解析2014

    • 著者名/発表者名
      〇中村祥子、堀江真行、大道寺智、本田知之、中屋隆明、小守壽文、朝長啓造
    • 学会等名
      第62回ウイルス学会学術集会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜 会議センター(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2014-11-10 – 2014-11-12
  • [学会発表] The regulation and functional significance of GALNT3 expression during influenza A virus infection2014

    • 著者名/発表者名
      〇Shoko Nakamura, Masayuki Horie, Mayo Yasugi, Tomo Daidoji, Atsushi Kuno, Daisuke Okuzaki, Akiko Makino, Tomoyuki Honda, Hisashi Narimatsu, Takaaki Nakaya, Keizo Tomonaga
    • 学会等名
      International Union of Microbiological Societies Congresses
    • 発表場所
      Montreal Convention Centre, Montreal, Canada
    • 年月日
      2014-07-27 – 2014-08-01
  • [学会発表] Identification of the ensing mechanism of Borna virus ribonucleoprotein in the nucleus2014

    • 著者名/発表者名
      〇Tomoyuki Honda, Daisuke Okuzaki, Akiko Makino, Shoko Nakamura, Keizo Tomonaga
    • 学会等名
      International Union of Microbiological Societies Congresses
    • 発表場所
      Montreal Convention Centre, Montreal, Canada
    • 年月日
      2014-07-27 – 2014-08-01
  • [学会発表] A型インフルエンザウイルス感染におけるムチン型糖転移酵素GALNT3の機能解析2014

    • 著者名/発表者名
      〇中村祥子、堀江真行、安木真世、大道寺智、久野敦、奥崎大介、牧野晶子、本田知之、成松久、中屋隆明、朝長啓造
    • 学会等名
      第28回インフルエンザ研究者交流の会シンポジウム
    • 発表場所
      鳥取市総合福祉センター さざんか会館(鳥取県鳥取市)
    • 年月日
      2014-07-04 – 2014-07-06

URL: 

公開日: 2016-06-01  

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