フロリゲンであるFTは葉から茎頂へと輸送された後、FDと複合体を形成することで花成を促進する。これまでにFDとFTの複合体形成はリン酸化依存的であること、カルシウム依存性のタンパク質キナーゼであるCDPKがFDをリン酸化して複合体形成を制御する有力な候補であることを示してきた。本年度は昨年度に取得した2つの候補CDPK、CPK6とCPK33についてさらなる解析を進めた。変異体の花成遅延表現型が軽微であることから花形成のマスター制御因子であるLEAFY (LFY)との遺伝学的相互作用を検討した。cpk33 lfy二重変異体を作成し、表現型を観察したところ、若干軽微ではあるものの、ft lfyあるいはfd lfy二重変異体と類似した表現型を示した。また表現型などの解析から、CPK6、CPK33以外のCDPKもFD T282のリン酸化に関与する可能性が考えられたため、リン酸化活性を喪失する変異を加えたCPK33(CPK33KD)を発現させることで、内生のFD T282をリン酸化するCDPKを優性的に阻害することを計画した。実際にCPK33KDがリン酸化活性を喪失していること、FDとの結合能を維持していることを確認した後、FDプロモーターの制御下でCPK33KDを発現する形質転換体を作成した。この形質転換体の花成時期を調べたところ、長日条件において顕著な花成遅延表現型を示すことが明らかとなった。本研究によって得られた結果はCPK33がFD T282をリン酸化することでフロリゲンFTとの複合体形成を制御していることを示唆している。これら得られた成果に関して学術論文として公表した。一部の内容は未発表であり、これに関しても学術論文として公表するべく投稿の準備を進めている。
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