研究課題/領域番号 |
13J06005
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
小波 さおり 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | X線天文学 / 銀河、銀河団 / 元素組成 / 化学進化 / 衛星開発 / 精密分光 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、銀河に付随する高温ガスの観測から、階層を超えた元素とエネルギーの対循環を明らかにし、宇宙の化学進化・構造進化に迫ることである。そのために、以下の2つの研究を遂行している。1. 銀河・銀河団に付随する高温プラズマの元素組成比を特定し、銀河から銀河団へといった物質の流れの解明, 2. 2015年度打ち上げ予定のASTRO-H衛星搭載SXSカロリメータを用いて、電荷交換、共鳴散乱、ドップラーシフトなど熱平行から外れたスペクトル構造から、高温・低温ガスの相互作用やガスの運動を解明する。 1つめについては、現在公開されている「すざく」衛星のデータを用いて、銀河団外縁部の元素組成比を求めた。今までは、銀河団外縁部において全体の元素組成は求められていたが、その輝度の暗さから個々の元素組成は求めることが困難であった。しかし、我々は十天体ほどの銀河団をスタッキングすることにより、鉄の元素組成を求めることに成功した。引き続きα元素の組成を求め、銀河団外縁部における元素合成、拡散史に迫る。 2つめについては、ASTRO-H衛星の2015年度打ち上げをめざし、マイクロカロリメータSXSのメンバーとして衛星試験に参加している。検出器であるカロリメータを極低温の50 mKまで冷やす3段式断熱消磁冷凍機(ADR)をコントロールするADRコントローラー (ADRC)の日本担当として、積極的に試験に参加し、中心メンバーとして活動している。打ち上げの年度が近づき、新居浜、つくばで打ち上げ時や直後、定常運用を仮定した様々な試験が長期に渡り行われおり、今後も続く予定である。さらに、打ち上げ後、いち早く効率的かつ精確に成果を発信するため、SXSによる銀河団中心の観測シミュレーションを行い、共鳴散乱の検出の有無を検討しており、結果を投稿論文にまとめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究目標達成をより確かなものにするべく、解析では当初の研究計画にはなかった銀河団の解析も始めており、結果が得られ始めている。また、ASTRO-H衛星の試験も順調に進んでおり、予定通り今年度の打ち上げを目指している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、銀河団外縁部の重元素組成、組成比について解析をすすめる。現在すでに求められている鉄の組成だけでなく、α元素の酸素やマグネシウムを銀河団外縁部で初めて測定できることを目指す。これらの個々の元素組成や組成比をまとめ、投稿論文として発表する。また、2015年度はASTRO-H衛星打ち上げの年度になるため、SXSチームメンバーとして衛星試験に参加し、打ち上げ後の迅速な解析、成果発表に備える。
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