研究課題/領域番号 |
13J06009
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
関口 洋平 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ベトナム / 高等教育の民営化 / 体制移行 / 私塾大学 / ソビエト・モデル / 公共性と営利性 |
研究概要 |
本研究では、体制移行のなかで進む民営化に伴って誕生してきた多様な高等教育機関類型に焦点を当てながら、主として管理運営のあり方に対する実態的側面からの検討を通じて、ベトナムにおける大学類型別の分化の実態とそれを包含する高等教育システムの特質を明らかにすることを目的とする。こうした目的のもと、平成25年度では、主として①高等教育制度の検討、②新たな大学類型に関する実態面での検討、そして③体制移行に伴う高等教育の変容を分析するための前提となる理論の検討の3点から研究を進めた。具体的な成果として、①については近年の制度的改革の方向性としては大学の自律性の向上、私塾大学の営利的活動の抑制、そして政府・共産党による大学への関与の維持・強化に集約される。②については、ハノイ市に滞在し(2013年10月~11月、2014年3月~4月)、国家的にとりわけ重要な大学とされる国家大学をはじめ、私塾大学であるタンロン大学など多数の大学を対象として聞き取り調査を実施した。現地調査を通じて明らかになったのは、営利型に加え、私塾大学では非営利型の類型でも、教育関連の企業と提携することで営利活動を一定の枠内でおこなっているということである。ただし、こうした動きは政府のお墨付きを得た一部の国立大学にも存在している。③については、ベトナム高等教育の出発点となる「ソビエト・モデル」を分析した。その特徴の1つである高等教育行政構造に着目して中国を比較対照に置いた結果、ベトナムでは現在でも、所管省庁と傘下の大学が人事や予算の点で複雑に結びついている状況が存在することが明らかになった。以上の研究成果は、高等教育の民営化の潮流のもと、ベトナムが、大学の公共性の担保と、市場化が進むなかで生じる営利性の均衡点を探ろうとしている実態が明らかになった点で意義のあるものといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度には、国内外での関連資料の収集とその分析、現地での聞き取り調査の実施を通じて、研究課題に積極的に取り組んだ。具体的には、新たな機関類型である私塾大学の形成過程や、南北ベトナム統一期の高等教育の変容、中国との比較によるベトナム高等教育行政の特徴の析出といった点で、学会発表や投稿論文の形式で成果を挙げることができた。これらの成果はほぼ所期の進捗状況にあると評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に引き続き、制度・実態・理論の3点から研究を遂行する。制度的検討に関しては、平成25年度の資料収集過程で新しく存在が明らかになった大学・職業教育省の紀要を手がかりに、マクロな高等教育システムの分析をおこなう。実態については、ハノイ市およびホーチミン市において初年度の調査結果について、研究員や大学の教員と意見交換を図りながら実態分析をおこなう。理論面での検討については、体制移行の類型枠組みにベトナムを位置づけ、より合理的な説明枠組みを構築する。
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