研究概要 |
近年, 港湾岸壁の経年劣化により発生した腐食孔から背面土砂が吸出しを受け, 耐久力の低下や内部空洞が発生し局所的な地盤沈下や上面陥没が発生した被害例が数多く報告されている。このような被害を未然に防ぐためには、現存の施設状況を正確に把握することが重要である。本研究の目的は, 音波を用いた港湾岸壁内外のイメージング手法の開発である。パラメトリックプローブを用いて港湾岸壁内部の深部まで探査を高分解能で行う手法の開発と音響ビデオカメラDIDSONを用いた詳細な3次元計測を行い、1cm~5cm程度の腐食孔や劣化により生じた傷等の検出を目的としている。 DIDSONによる詳細部のイメージングは、所属研究室所有の中型実験水槽において、傷を付けたコンクリート板や鋼矢板を用いてデータの収集を行った後、腐食孔があらかじめ発見されている実岸壁にて試験を行った。実岸壁での試験では、岸壁側からバックホウを用いて低速(0.2m/s程度)で移動し腐食孔周辺の調査を行った。結果は、調査船を使用するときよりも動揺(波などの影響)を除去し詳細で歪みが少ないデータを取得した。鋼矢板岸壁の形状をはっきりと捉え、鉛直・水平・奥行き方向の誤差を2cm以下に押さえた。特に、奥行き方向は3㎜程度の分解能で計測が可能である。これにより当初の目的であった1cm~5cm程度の腐食孔や劣化により生じた傷等の検出が可能となった。 内部空洞調査では、既存のパラメトリックソーナーに独自に設計したフレネルレンズを装着し、方位分解能の向上を図り位置探査能力を向上させ、厚さ1mのコンクリート内部を探査することに成功した。 以上の本年度の成果により、小さな腐食孔や劣化により生じた傷等の検出が可能となり、コンクリート内部深度1mの範囲を探査可能とした。現存の施設状況を正確に把握する技術の開発に近づいたこととなる。
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