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2013 年度 実績報告書

河川環境改変がニホンウナギの分布や成長に与える影響の解明

研究課題

研究課題/領域番号 13J06053
研究機関東京大学

研究代表者

板倉 光  東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)

キーワードニホンウナギ / 環境改変 / 護岸工事 / 食性 / 分布と移動 / 生物多様性 / 自然再生 / 保全
研究概要

ニホンウナギは我が国の重要な水産資源であるが, 稚魚であるシラスウナギの採捕量は近年激減しており, 資源の保全が急務となっている. 近年, 成育場である沿岸域の都市化や人口増加に伴う河川・湖沼の環境改変による本種への影響が懸念されているが, その詳細は不明である. 外洋と沿岸, 双方に跨がって展開される彼らの生活史の中で, 資源管理を行うことが可能な場所は沿岸域だけであり, 生息環境変化の影響を正確に評価することは本種資源の保全策立案のために極めて重要である. そこで, 本研究では, 環境改変として水際線の護岸工事に着目し, 護岸による生息環境の改変がニホンウナギにどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的とし, 研究を展開した.
初めに, 国内の河川・湖沼における護岸工事の進行と漁獲量減少との関係を解析した結果, 護岸率が高い河川, 湖沼ほど漁獲量の減少率が高いことが明らかになり, 護岸による本種の餌生物や隠れ家等の減少が漁獲量減少の一因となっていることが示唆された. 次に, 利根川水系において野外調査を実施した結果, 自然河岸域に比べてニホンウナギの生息密度が低かった護岸域では, 餌生物の多様性や摂餌量も低い傾向にあることが明らかになった. また, バイオテレメトリー実験の結果, ニホンウナギは個体毎に約1年間に亘って, 限定的な分布・移動を示し, 狭い生活圏を持つことが分かった. 生息環境への定着性が強いため, 餌環境が悪化している護岸域にも長期に亘って分布し続け, 結果的に護岸域に分布する個体の栄養状態が悪化していることが明らかになった. 以上より, 護岸による餌環境の悪化によってニホンウナギの生息に悪影響が及んでいる可能性が示唆された. また, 保全の観点から, 多自然川づくりによって河川改修が実施されている同水系の根木名川においてニホンウナギの分布を調査した結果, 人工的な河岸構造物であっても, 河岸に蛇籠が設置された水域においては本種やその餌生物が多く生息する傾向にあった. この結果は, 蛇籠を用いた河川改修は生息環境の改善に一定の効果が現れている可能性を示唆するものである.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

野外調査では予想以上のサンプルやデータの取得に成功し, その後の試料分析, データ解析等, いずれも順調に進んでいる. 成果の一部はすでに国際誌への掲載が決定しているものや査読中のものがある. それに続く成果についても国内の学会において発表し, 学術誌に公表すべく準備を進めている.

今後の研究の推進方策

すでに解析が終わったデータについて全て国際誌に投稿するとともに, 現在もデータを取り続けているバイオテレメトリーによる分布域のモニタリングについては, 今後より多様な個体のデータ解析を行っていくことで, 河川内の分布や行動特性をより詳細に明らかにしていく予定である. また, 水際線の改変以外の生息環境の変化についてもその影響を評価する予定である. 具体的には, 河口堰やダム建設など河川横断構造物がニホンウナギの遡上や降河回遊に与える影響である. この検証には, 耳石の酸素安定同位体比分析を用いた天然遡上個体の河川内分布調査やバイオテレメトリーを用いた降河回遊個体の追跡等を予定している.

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Declines in catches of Japanese eels in rivers and lakes across Japan : Have river and Iake modifications reduced fishery cathes?2014

    • 著者名/発表者名
      Hikaru Itakura
    • 雑誌名

      Landscape and Ecological Engineering

    • DOI

      10.1007/s11355-014-0252-0

    • 査読あり
  • [学会発表] 河川改修による生息環境の変化はニホンウナギにどのような影響を与えるか?2014

    • 著者名/発表者名
      板倉光・三宅陽一・北川貴士・木村伸吾
    • 学会等名
      東京大学生命科学シンポジウム
    • 発表場所
      東京大学本郷キャンパス, 伊藤国際学術研究センター, 東京
    • 年月日
      2014-04-26
  • [学会発表] ニホンウナギのホームレンジと帰巣性2014

    • 著者名/発表者名
      板倉光・甲斐野翼・三宅陽一・北川貴士・木村伸吾
    • 学会等名
      日本水産学会
    • 発表場所
      北海道大学, 北海道
    • 年月日
      2014-03-28
  • [学会発表] ニホンウナギ天然加入個体/放流個体識別法とその応用2014

    • 著者名/発表者名
      海部健三・天野洋典・板倉光・杉原奈央子・白井厚太朗・横内一樹・大竹二雄・木村伸吾・鷲谷いづみ・矢田崇
    • 学会等名
      日本水産学会
    • 発表場所
      北海道大学, 北海道
    • 年月日
      2014-03-28
  • [学会発表] 護岸による生息環境劣化はニホンウナギにどのような影響を与えるか?2014

    • 著者名/発表者名
      板倉光・甲斐野翼・三宅陽一・北川貴士・木村伸吾
    • 学会等名
      日本生態学会
    • 発表場所
      広島国際会議場, 広島
    • 年月日
      2014-03-16
  • [学会発表] 護岸による生息環境劣化はニホンウナギ生態にどのような影響を与えるか?2014

    • 著者名/発表者名
      板倉光・木村伸吾
    • 学会等名
      グローバルCOEプログラム, 自然共生社会を拓くアジア保全生態学公開シンポジウム「なぜウナギは減少しているのか? -ウナギが告げる水辺環境の危機」
    • 発表場所
      九州大学箱崎キャンパス, 中央図書館, 視聴覚ホール, 福岡
    • 年月日
      2014-02-09
    • 招待講演
  • [学会発表] 河川改修による生息域の環境改変がニホンウナギの分布に与える影響2013

    • 著者名/発表者名
      板倉光・永沼翼・竹茂愛吾・三宅陽一・北川貴士・木村伸吾
    • 学会等名
      日本水産学会
    • 発表場所
      三重大学, 三重
    • 年月日
      2013-09-21
  • [学会発表] バイオテレメトリーを用いたニホンウナギの河川内分布と移動特性2013

    • 著者名/発表者名
      木村伸吾・板倉光・永沼翼・三宅陽一・北川貴士
    • 学会等名
      日本水産学会
    • 発表場所
      三重大学, 三重
    • 年月日
      2013-09-21
  • [学会発表] 耳石酸素・炭素安定同位体比を利用したニホンウナギ天然加入個体/放流個体識別法の開発2013

    • 著者名/発表者名
      海部健三・天野洋典・板倉光・横内一樹・白井厚太朗・大竹二雄・木村伸吾・鷲谷いづみ・矢田崇
    • 学会等名
      日本水産学会
    • 発表場所
      三重大学, 三重
    • 年月日
      2013-09-21
  • [学会発表] コンクリート護岸がニホンウナギの分布に与える影響2013

    • 著者名/発表者名
      永沼翼・板倉光・竹茂愛吾・木村伸吾
    • 学会等名
      土木学会
    • 発表場所
      日本大学, 千葉
    • 年月日
      2013-09-04
  • [学会発表] 河川環境とニホンウナギの生息域利用-大規模河川における護岸と分布の関係-2013

    • 著者名/発表者名
      板倉光・木村伸吾
    • 学会等名
      東アジア鰻資源協議会公開シンポジウム。ウナギの持続的利用は可能か-うな丼の未来
    • 発表場所
      東京大学弥生キャンパス, 弥生講堂, 東京
    • 年月日
      2013-07-22
    • 招待講演
  • [図書] うな丼の未来 ウナギの持続的利用は可能か2013

    • 著者名/発表者名
      板倉光, 他
    • 総ページ数
      275 (136)
    • 出版者
      青土社
  • [備考]

    • URL

      http://mbe.aori.u-tokyo.ac.jp

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公開日: 2015-07-15  

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