研究課題
護岸や河川横断工作物による生息環境の変化がニホンウナギの成長期にあたる黄ウナギの生態に与える影響を理解することが本研究の目的である.初めに,日本の18河川と9湖沼の漁獲量減少率と護岸率との関係を検討した結果,護岸率が高い河川・湖沼ほど減少率が高いことを発見し,護岸による環境改変が本種の生息に悪影響を与える可能性が示された.利根川で野外調査を実施した.テレメトリー実験の結果,黄ウナギは夜間の1時間に数10m程度しか移動しないこと,冬は活動しないこと,1年間の行動圏が狭いこと,元々の生息場所への回帰性を持つこと,個体間の行動圏の重複は少ないことなどが分かった,また,汽水~淡水域の護岸域と自然河岸域(計15地点)から黄ウナギ586個体を採集したところ,護岸域の密度と肥満度は自然河岸域よりも低く,その傾向は小型個体で顕著であることが分かった.胃内容物,遺伝子,炭素・窒素安定同位体比の解析から黄ウナギの摂餌生態を検討した結果,摂餌量は護岸域の方が低く,このことが水域間の肥満度の差を生み出すものと推測された.自然河岸域の主要な餌生物は陸生ミミズ類と推定されたが,これらは護岸域で採集された個体の胃内容物からは全く出現しなかった.これにより,護岸はミミズ類の供給を通した陸-河川生態系の繋がりを断ち切っていることが示唆された.支流根木名川での採集調査からは,護岸であってもブロックや蛇籠の区間は黄ウナギが高密度で生息しており,これらの構造物は黄ウナギの生息環境を再生・保全する上で非常に重要であることが示された.耳石酸素炭素安定同位体比を用いて天然加入個体と放流個体の識別法を開発し,利根川河口堰の上・下流域で採集された個体を判別したところ,調査した全ての水域で天然加入個体が高い割合を示したことから,本河口堰はニホンウナギの上流への移動をある程度可能にしていることが推察された.
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Landscape and Ecological Engineering
巻: 11 ページ: 147~160
10.1007/s11355-014-0252-0
Environmental Biology of Fishes
巻: in press ページ: in press
10.1007/s10641-015-0404-6
http://mbe.aori.u-tokyo.ac.jp