研究課題/領域番号 |
13J06058
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
SIM DARA 大阪大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | 金利期間構造モデル / 信用リスクモデル / 倒産確率の推定 / 回収率の推定 / クレジット・デフォルト・スワップ / 経済先行き見通しの指標 |
研究概要 |
金融システムの状態は我々の人間の毎日の生活に直接に関わっていて、金融危機が起こし金融システムが崩壊すれば景気後退や失業率の上昇などのような不幸を招く可能性がある。すなわち、金融システムの健全性を維持することは極めて重要なことなのである。そのためには、過去の危機の教訓を踏まえれば、リスクを認識し正しく評価する必要があるというのである。リスクの評価に当たって一つの問題点として指摘されるのは、評価モデルに十分に経済の先行き見通しを組み入れなかったということである。経済の先行き見通しは将来経済がどのような状況にあるであろうかを事前に知らせてくれる重要な情報で、それを考慮すべきだという考えである。経済先行き見通しとして国内総生産(GDP)に基づいた指標があるが、GDPは頻繁に観測できず低頻度のデータしか得られないため評価に遅れが現れやすい。一方、金利は日々観測可能である上、将来の経済成長、インフレおよび景気後退の有力な予測情報を含んでいると知られている。そう言った問題意識の下で本研究の目的は金利ファクターを組み入れた信用リスク評価モデルを構築し推定することである。今年度の実績として、 ① 金利期間構造モデルを構築し米国債と日本国債の利回りデータを用いて推定した。良いパフォーマンスを持つモデルである上、モデルを構成する金利ファクターが経済先行き見通し指標として解釈可能だということを示した。 ② さらに、その金利期間構造モデルのファクターを組み入れたクレジット・デフォルト・スワップ(CDSモデルも構築しCDS期間構造データで推定しシミュレーションも行った。CDS期間構造データのみ用いてインプライド倒産確率と回収率を同時に推定するというアプローチを取ると正しく推定できないことを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
経済先行き見通しを考慮したCDS評価モデルを構築したが、それを考慮した場合とそうでない場合の相違についてはまだ考察していない。さらに、1つ企業のみ信用リスクモデルに重点を置いたが、信用ポートフォリオモデルまでまだ考えていない。
|
今後の研究の推進方策 |
経済先行き見通しの指標として用いる可能な金利ファクターを考慮したCDS評価モデルを構築したが、経済先行き見通しを考慮した場合とそうでない場合の相違についてはまだ考察していない。問題点は、モデルを推定するために用いられる従来のアプローチでは、今年度の実績として示したように、インプライド倒産確率及び回収率を正しく推定できないことである。経済先行き見通しの考慮による効果を考察するのに、モデルを正しく推定できる新たなアプローチを考える必要がある。方策として考えるのは以下である。 ① 従来のアプローチではCDS期間構造のデータのみ用いるが、追加的に、例えば、企業の資本構成のデータも用いる。 ② デフォルト強度と回収率モデルを同時識別推定できないから、同時にする方法を探すかあるいは個別に推定する。
|