研究課題/領域番号 |
13J06059
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
阪口 翔太 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ヒノキ / オーストラリア / 針葉樹 / 高密度連鎖地図 / RAD-seq |
研究実績の概要 |
豪州ヒノキ複合種はオーストラリア大陸全域に分布を拡大した系統群であり,砂漠・温帯・熱帯サバンナという多様な気候下で生育している.本研究では,この豪州ヒノキを対象にした生態ゲノミクスを展開することで,本種群における環境適応の遺伝的基盤を解明するとともに,遺伝的適応がその後の集団サイズや生態ニッチの拡大にどのように寄与したのかを解明することを目的としている. 平成26年度では,豪州ヒノキ複合種について連鎖地図を作成することを目的とし研究を行った.裸子植物である豪州ヒノキにおいては,種子に含まれる胚乳組織が半数性であることから,同一母樹から採取した胚乳組織を遺伝解析することで,連鎖地図を作成することが可能である.そこで,平成25年度に大量の遺伝マーカーを生成することのできたRAD-seq解析とEST-SSR解析により,高密度連鎖地図を作成することとした.解析の結果,4,280マーカーが11連鎖群に座上する連鎖地図が構築され,マップカバー率は0.99を超えた.連鎖群数は豪州ヒノキの染色体数に対応していた. この基盤地図の有用性を検証するため,複合種を構成する2種(C. glaucophyllaとC. gracilis)の集団試料を同じくRAD-seq解析に供し,得られた多型マーカーと基盤連鎖地図との対応を調べたところ,873多型マーカーが地図上にマッピングされた.マッピングされた多型マーカーに基づいて,2種間での交雑現象を解析したところ,連鎖群上でのゲノム混合率にばらつきがあり,例えば交雑個体の第1連鎖群の先頭部ではC. gracilisのゲノム組成が非常に高いことが明らかになった.以上の解析から,今年度作成した高密度連鎖地図は豪州ヒノキの生態ゲノミクス解析に応用可能であることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は豪州ヒノキにおいて初めて連鎖地図を作成することに成功し,その地図を集団多型解析に応用できることを確かめることができた.この成果から,当初の研究実施計画に即して順調に研究が進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
RAD-seq解析で得られた基盤連鎖地図に基づいて,複合種の様々な種ペアに関してゲノムスキャン解析を行い,ペアの間でゲノムの分化パターンを比較する.また,降水勾配に沿って分布している集団を対象にRNA-seq解析を行い,集団統計学的解析によって自然選択の影響を受けている候補遺伝子を抽出する予定である.
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