研究課題/領域番号 |
13J06089
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
永山 聡子 一橋大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 周産期医療 / 占領期と女性 / 助産婦 / 医療政策 / ジェンダー / 女性の身体 / 母乳育児 / インタヴュー |
研究実績の概要 |
研究代表者の研究は、母乳育児という極めて私的空間で営まれている行為が、公的空間へ包摂された要因を、敗戦後のグローバルな社会変動としての、PHW・WHO・UNICEFの推奨する周産期医療観と日本の周産期医療界の権力地図、であるという仮説を立て、そのメカニズムについて社会学的考察を用いて明らかにすることである。 1次資料については、第1群(国際政治と母乳育児)は、国際連合本部資料室などの関係資料を収集・整理を行った。第2群(厚生省関連)、第3群(周産期医療と母乳育児):特に、1948年に医政局看護課が廃止される危機に対して、看護婦らが反対運動を起こした事件については看護婦側の資料はあったものの、厚生省側の資料は手薄であったため調査を行った。これらをきっかけに二度と厚生省から看護課を廃止させないために、アメリカ留学組を中心に、看護政治連盟が発足したことが明らかになった。このことは、厚生行政内において助産婦の待遇・地位の後退を意味していた。そのため母子支援、母乳育児に関する主導権は「看護」の範疇に入ることになった。その結果として、医師中心の周産期医療が成立するきっかけとなった。この関係を示す資料を数点収集した。第4群(人々の認識)は、「母乳」「授乳」「病院出産」「助産婦」「産婦人科医」などのキーワードを入力し新聞記事を整理した。 先行研究は、同時代のリプロダクティブ・ヘルス・ライツ研究、戦後日本の女性関連政策と医療問題研究と既存の医療従事者研究を架橋すべく検討を行った。また新たに、厚生省に関する先行研究の収集・分類も開始した。 フィールド調査・インタヴュー調査については、修士論文の調査、2013年度に行った調査の分析作業を進めた。そこで不足している質問項目、追加調査に関しては、随時行った。引き続き調査を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
短い間に、研究作業・学会報告・執筆活動・諸々のプロジェクトを行っており、研究課題を前に進めようと懸命に取り組んだ。特に、当該研究にとって肝要な資料を、各地で大量に収集することができた。また、研究代表者が持つ多面的な人的ネットワークを生かして、調査研究・ワークショップによる議論と情報共有・研究報告などの貴重な場をもつことができた。じっくりした作業を行うべき2年目としては、充分に研究が進捗した。 2015年度以降は、やや分散しがちな関心・行動を、上手に一本の線でつないで連関させつつ、研究課題を丁寧に深く掘り下げる作業に専念・集中する時間を多くとることが、ますます求められる。2015年度は最終年度になるため、これまでに得られた知見を着実に成果として形にしていくための、地道な分析・執筆作業が不可欠である。
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今後の研究の推進方策 |
第1群:歴史史料、関連団体保有の資料収集・分析・考察作業を行う。具体的には、4月~9月:国際連合本部資料室(米国・ニューヨーク)の翻訳作業、その後の読み込みと分析を進め、当時の時代像を描く作業を行う。第2群(厚生省関係)と第3群(周産期医療と母乳育児)の史資料については、まだ少し資料収集が必要である。そのために引き続き資料収集を継続させることが求められる。そして、分析した箇所を改めて読み直し、さらに厚みのある分析を加え、先行研究との差異を明確化させる作業を行う。その中でも特に医療社会学、ジェンダー研究の成果と歴史社会学の成果を架橋する作業を念入りに行う。フィールド調査・インタヴュー調査は随時点検作業を行い、補足的な作業を行い、10月には終わらせ最終的な分析作業を進める。その際には、社会調査の倫理である、調査内容をインフォーマントに報告し、学会報告・論文執筆に使用してよいのか、再度確認を行う。これは継続する研究を支える大事な作業となる。 9月以降の作業は、積極的に研究の成果をアウトプットするために、学会報告・論文執筆作業を行う。その先駆けとして、6月開催の「関東社会学会」で報告を行う予定である。9月開催の「国際ジェンダー学会」にて「母乳育児推進政策のジェンダー」の報告を行い、3月提出の投稿論文に向けての最終調整を行う。さらに、「社会学評論」に投稿するために論文執筆を行う。
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