研究課題
目や耳などの感覚器官に届く刺激から、特に1秒以下の短い時間の情報を得ることは、話し言葉や音楽のリズムを捉えるなど日常の時間知覚において重要である。本研究では、このような短い時間の知覚の仕組みを脳活動計測により探り、脳が「いつ、どこで、どのような」時間情報を得ているかを明らかにする。本年度は、時間間隔の始まりと終わりを示す区切刺激として、聴覚刺激のみを用いた場合と、聴覚刺激と視覚刺激を組み合わせて用いた場合とについて、時間間隔の知覚と弁別の難易度に関わる脳活動を、事象関連電位計測を用いて調べた実験の結果を分析した。聴覚刺激のみを用いた場合には、時間間隔の呈示中に前頭・中心部で記録される伴性陰性変動の振幅が時間とともに増加したが、聴覚刺激と視覚刺激を用いた場合には増加せず、このことは弁別の難易度とは関連しないことが明らかになった。さらに、全電極・全条件で得られた事象関連電位を多変量解析を用いて分析し、刺激の感覚モダリティや難易度に関連する活動と、刺激の感覚モダリティや難易度に関わらない共通した活動とを別々に捉えることができる可能性を示した。この結果は、国際学会で発表し、次年度には論文にまとめる予定である。さらに、三つの区切り刺激で示された二つの隣接する時間間隔の知覚に関する研究を行った。先行する時間間隔の長さによって、後続の時間間隔の主観的な長さが変化することが、実験心理学の研究で報告されている。このことに関連し、先行する時間間隔の長さを変化させながら、後続の時間間隔の主観的な長さを求める実験を行い、同時に脳磁図を用いて脳活動を計測する予備実験を行った。今後、実験パラダイムを見直し、本実験を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
聴覚刺激および視聴覚刺激を用いた場合の時間弁別に関して、多変量解析を用いた分析を行い、感覚モダリティごとに異なる脳活動と、感覚モダリティに関わらず共通する脳活動とを捉えることができる可能性を示すことができた。この結果を国際学会で発表し、次年度に論文執筆をするうえで役立つ情報交換をすることができた。
聴覚刺激または視聴覚刺激を用いた時間弁別の難易度に関連する実験に関しては、脳活動のデータの分析を進め、論文投稿を目指す。聴覚の時間知覚に関しては、脳磁図を用いた予備実験をもとに実験パラダイムの修正を行い、実験および分析を行う。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件)
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