研究課題
話し言葉や音楽のリズムを捉えるなど日常のリズム知覚において、目や耳などの感覚器官に届いた刺激から、特に1秒以下の短い時間の情報を得ることは不可欠である。本研究は、様々な感覚様相からの時間情報を処理、統合する脳の仕組みを明らかにすることを目的とした。本年度は、昨年度に引き続き、三つの区切り音で示された二つの隣接する時間間隔という刺激パターンを用いて、先行する時間間隔の長さが後続する時間間隔の主観的な長さに及ぼす影響を調べる実験を行い、同時に脳磁図を用いて脳活動の計測を行った。その結果、先行する時間間隔が後続の時間間隔よりも十分短い場合に、後続の時間間隔が過大評価されるという現象が約半数の実験参加者において確認されたが、この過大評価に関連する脳活動の検討が今後の課題として残った。本年度7月に所属機関を変更し、聴覚の時間知覚の実験を新たに行った。実験では、本物のピアノの音と、ピアノの音の時間構造または周波数構造の一方または両方を模擬した合成音とを用いて、音そのものの主観的な長さを調べたところ、物理的に等しい長さであっても、ピアノの音のように振幅が減衰する音は振幅が一定の音に比べて短く感じられること、また、周波数構造が複雑なピアノの音と比べて周波数構造が単純な純音は短く感じられることが明らかになった。このような時間構造や周波数構造の影響は、音の長さが非常に短いときには見られず、数百ミリ秒以下の短い時間の知覚の仕組みを解明するうえで重要な知見を得ることができた。この他、昨年度までに行っていた聴覚刺激と視覚刺激を用いた時間弁別の難易度に関する脳波実験について国際学会で発表し、論文を執筆するうえで重要な助言を得ることができた。上記の成果に関しても、今後随時論文にまとめ、投稿する予定である。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Japanese Journal of Psychonomic Science
巻: 34 ページ: 2-16
http://dx.doi.org/10.14947/psychono.34.2