研究課題/領域番号 |
13J06092
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野村 陽子 東京大学, 医学部附属病院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 加齢黄斑変性 / ブルッフ膜 / エラスチン / A2E / 網膜色素上皮細胞 / オートファジー |
研究概要 |
本研究では、エラスチンを主要構成成分とするブルッフ膜と加齢黄斑変性の病態との関与を明らかにすることを目的としており、本年度は下記の成果を得た。 ブルッフ膜は網膜色素上皮細胞の基底膜であるため網膜色素上皮細胞のスフェロイド培養系を用いた。ビタミンAの代謝産物であるall trans retinalと視細胞外節に豊富に存在するphosphatidilethanolamineが結合して形成されるA2Eは、加齢に伴って網膜色素上皮細胞に沈着する老化物質であるリポフスチンの主要成分である。このA2Eの存在下で網膜色素上皮細胞をスフェロイド培養するとヒアリン質構造の増加が認められ、エラスチンの免疫染色を行うと通常では瀰漫性の均一な染色がみられたのに対し、A2Eの存在下では濃染した球状の構造物を認めた。さらに、エラスチンの発現をRT-PCRで確かめるとエラスチンの過剰発現が認められ、A2Eの存在下ではブルッフ膜のリモデリングが亢進していると推察された。A2Eの網膜色素上皮への影響をオートファジーに着目して解析すると、A2Eの存在下ではオートファジーのマーカーであるLC3-IIの増加を認め、オートファジーが誘導されることが示唆された。そこで、オートファジーを阻害する3MAとA2Eの存在下で前述のように網膜色素上皮細胞をスフェロイド培養するとさらなるヒアリン質構造物の増加とエラスチン免疫染色では多くの濃染した球状物質を認めた。これらより以下の機序が示唆された。すなわち、A2Eの存在下では網膜色素上皮細胞の機能低下が起こり、基底膜であるブルッフ膜の統一性が保てなくなるが、オートファジーが亢進し代償的に働いている。加齢などによりオートファジー機能の低下が起こると、さらに網膜色素上皮細胞の機能低下とブルッフ膜の変性が惹起される。(704文字)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
加齢によりブルッフ膜が変性するメカニズムの少なくとも一部を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
加齢に伴いブルッフ膜が変性するメカニズムをin vitroで明らかにすることができたので、今後はブルッフ膜の変性が新生血管惹起に関与する機序を明らかにすべく検討を続ける。
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