研究課題
1年目である本年は、培養細胞を用いた運動能の評価系の構築を試みた。当初はラット培養ポドサイトを使用しスクリーニングを行う予定であったが、多数のサンプルを評価する系の構築が困難であった。これまで腫瘍細胞とポドサイトの運動能の分子機構の共通性から腫瘍細胞の浸潤における先行研究がポドサイトでの研究に応用されてきたこと、さらに細胞内の小胞輸送が浸潤に関わることが近年報告されていることから、RabファミリーのsiRNAライブラリーを用いて腫瘍細胞の浸潤に必須な因子を同定し、次いでその因子のポドサイトでの機能解析を行うこととした。浸潤能を持つ乳癌由来細胞MDA-MB-231細胞を用い、蛍光ゼラチンの分解能を有する細胞の割合を定量した。1次スクリーニングとして、3つの異なる配列がプールされている全Rabファミリーに対するsiRNAをMDA-MB-231細胞に導入し、ゼラチン分解能を有する細胞をコントロールに比べ大幅に減少させる因子を選出した。続いて2次スクリーニングを行い、1次スクリーニングを通過した候補因子に対し、3つの異なる配列のsiRNAを単独で導入し、どのsiRNAを導入してもゼラチン分解能を減少させる因子を選出した。3次スクリーニングとして、細胞外基質であるマトリゲルへの浸潤能を評価した。2次スクリーニングで選出した候補因子のsiRNAを用い、マトリゲル中を閾値以上の高さまで上行したMDA-MB-231細胞数を計測したところ、複数の候補因子のsiRNAでは細胞数が大幅に減少していた。なお、標的因子のmRNAの減少はqPCR法にて確認した。以上の実験により、MDA-MB-231細胞において浸潤能に必須なRabファミリーを同定することができた。
2: おおむね順調に進展している
一年目の本年は、当初の予定していたポドサイトの実験系の確立は困難であったものの、他の細胞を用いた手法に変更し研究を実施したことで、スクリーニングが大幅に進んだ。このスクリーニングの結果は、腎臓ポドサイトへの応用はもちろんのこと、腫瘍などの分野でも非常に重要な因子の解明につながり、今後の発展が大いに期待される。
他の腫瘍細胞における候補因子の浸潤能の影響を解析し、候補因子をさらに絞り込む。その後候補因子を恒常的にノックダウンさせた細胞株を作成し、運動能の変化をきたす機序の解明に取り組む予定である。
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Nephrol Dial Transplant.
巻: 29 ページ: 81-8
10.1093/ndt/gft350
巻: 28 ページ: 2993-3003