研究課題/領域番号 |
13J06131
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
徳光 直子 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 社会政策 / 社会福祉 / 都市政策 / 貧困 / 都市 / フィールドワーク / フランス / 国際情報交換 |
研究概要 |
本研究の目的は『フランスの困難地域における包括型生活支援の成立条件』を解明することである。「包括型生活支援」とは、生活困窮者個人に対し、各々の経済的破綻に至るまでの諸要因に分野横断的に対応する支援を指す。1990年代以降、フランスの地方自治体に広がりつつある「福祉の仲介活動」がこの支援の実現につながっていることから、本活動を考察の対象とした。特に、「福祉の仲介活動」が実施されていても包括型生活支援が成立しない地域があることに注目し、包括型生活支援の成立に地域差が生じる理由を明らかにすることを目的としている。 平成25年度は、1. 関連する法制度・条例の整理、既存研究の渉猟、2. 各都市における仲介活動実施状況の把握と類型作業、3. 類型作業から選出した都市(レンヌ、ラロシェル、トゥーロン、パリ)における資料調査、インタビュー調査(対行政職員、仲介活動実践者・責任者)、仲介活動団体での参与観察を行った。その結果、次の2点を確認した。 第1に、「福祉の仲介活動」は治安政策、雇用政策、福祉政策の政策的連関の産物であり、その連関を可能にした都市政策に財政的・法的基盤を置いていることを確認した。具体的には、1. 地方自治体による公的秩序・生活安全の促進、2. 失業中の若者のための雇用創出、3. 社会的孤立に対する福祉の重点化、が仲介活動の成立に寄与したことが認識できた。その背景には、失業率の上昇とともに都市における軽犯罪への危惧が上昇したことが挙げられる。 第2に、4都市(レンヌ、ラロシェル、トゥーロン、パリ)の比較調査から、包括型生活支援の成立に地域差が出る背景には、地方自治体と仲介活動団体のパートナーシップの強度が大きく寄与していることを確認した。特に自治体と綿密なコミュニケーションが取れ、かつ財政的な依存度が弱い仲介活動団体ほど、包括型生活支援の成立に貢献していることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に実施予定であった項目を年内に達成したほか、平成26年度に行う予定であった調査についても平成25年度中に具体化することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、1990年以降の行政資料から、4都市(レンヌ、ラロシェル、トゥーロン、パリ)において自治体の予防政策が仲介活動の内容に及ぼす影響を具体的に解明する。また、平成25年度には十分に達成することができなかった福祉・教育・就労サービス実践者にさらなる聞き取り調査を行い、仲介活動と地域の専門家集団の連携が可能になった背景・理由を分析する。 平成27年度は、仲介活動実践者一人一人に対する聞き取り調査を主に実施し、仲介活動に従事するまでの背景、および彼らの職業的価値観、社会的統合に対する意識を主に明らかにする。その後、これまで調査で得た知見を総括し、包括型生活支援の成立条件の解明を行う。必要に応じて追加調査を行う。 なお、平成26年度から大原社会問題研究所雑誌やフランスの学術雑誌に論文を投稿していく予定である。
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