研究課題/領域番号 |
13J06166
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小田 晋 東北大学, 大学院生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | イネ / 耐冷性 / ジベレリン / 一穂穎花数 / qCT-7 |
研究概要 |
花粉形成期の耐冷性が異なる「ササニシキ(耐冷性弱)」と「ひとめぼれ(耐冷性強)」の比較解析から、2品種間の耐冷性の差には、1「一穂籾数」や2「ジベレリン(GA)や糖の遺伝子発現」、3「耐冷性に関わるQTLであるqCT-7」の3つの要因が関与している可能性を見出してきた。これらの要因と耐冷性の関係について解析した。 1、コシヒカリ(耐冷性強)の遺伝的背景に、ハバタキ(多収米)の一穂籾数に関するQTLであるSCM2や(Gn1を含む染色体断片置換系統群(CSSL)では、一穂籾数がコシヒカリより増加し、逆に耐冷性は低下することを明らかにした。GnとGn1の両方を持つ系統では、さらに一穂籾数が増え、耐冷性のさらなる低下を確認した。以上の結果から、多収形質の一つである一穂籾数と耐冷性形質の間には、負の相関があることを証明した。 2、葯において、(GA20ox-3とGA3ox-1の発現量は花粉の発達に伴って著しく上昇するが、冷温処理した葯ではこの顕著な誘導が抑えられることを見出した。冷温処理と同時に外生GAを処理することで、種子捻実率の低下が回復すること、外生GAとスクロースを同時に投与することで、その回復効果が更に向上することもみいだした。また、GAにより負に制御されるDELLAタンパク質のSLR1/DELLA遺伝子と、その転写誘導に関わるストレス応答転写因子DREB2Bの発現量が、冷温処理により前減数分裂期から花粉一細胞期にかけての葯で高く誘導されることも解明した。 3、コシヒカリと日本晴を親としたCSSLを実験材料とし、qCT-7を含む第7染色体下腕に関する解析を行った。その結果、日本晴の遺伝的背景にコシヒカリ型qCT-7を含む断片が置換された系統では耐冷性が有意に向上するが、逆に、コシヒカリの遺伝的背景に日本晴型断片が置換された系統では耐冷性の低下は見られないという新たな複雑さを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ジベレリンと耐冷性の関係に関しては、GA処理によって種子稔実率が回復するということだけではなく、GA生合成遺伝子やGAにより負に制御されるSLR1/DELLAやDERB遺伝子の変動も明らかにし、耐冷性メカニズムの一部を明らかにし、論文を国際誌に投稿し受理された。一穂籾数と耐冷性の研究も次年度までには論文にまとめる予定である。qCT-7と耐冷性についても順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ジベレリンと耐冷性の関係に関しては、論文を国際誌に投稿し受理され目標を達成することができた。一穂籾数と耐冷性の関係に関しては、成熟花粉数の測定し考察した後に、論文を執筆する予定である。qCT-7と耐冷性の関係に関しては、マイクロアレイ解析から高速シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析に切り替え、qCT-7を持つことでイネ全体としてはどのような遺伝子の発現が変動するかを網羅的に解析すると共に、コシヒカリと日本晴を掛け合わせ、日本晴背景にコシヒカリのqCT-7をもつ組換え近郊系統を作成し、qCT-7による花粉形成期の耐冷性獲得機構について明らかにしていく。
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